商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 新潮社 |
発売年月日 | 2024/04/25 |
JAN | 9784103556312 |
- 書籍
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国家の命運は金融にあり 高橋是清の生涯(上)
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国家の命運は金融にあり 高橋是清の生涯(上)
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嘉永7(1854)年に⽣まれ、昭和11(1936)年の ⼆・⼆六事件で⾮業の死を遂げるまでの81年間におよぶ⾼橋是 清の⽣涯は、掛け値なしに波瀾万丈と⾔ってよい。前半⽣のクライマック スは、⽇露戦争時の外債発⾏に奔⾛し、それを⾒事に成功させる場⾯である。まさに 「国家の命運」を握...
嘉永7(1854)年に⽣まれ、昭和11(1936)年の ⼆・⼆六事件で⾮業の死を遂げるまでの81年間におよぶ⾼橋是 清の⽣涯は、掛け値なしに波瀾万丈と⾔ってよい。前半⽣のクライマック スは、⽇露戦争時の外債発⾏に奔⾛し、それを⾒事に成功させる場⾯である。まさに 「国家の命運」を握った是清の国際⾦融の舞台での⼤活躍に読者は⼿に汗を握ること になる。 しかし、是清は⾦融の天才では決してない。それどころか、⻘年期の放蕩三昧の⽣活や怪しい投資話に⼿を出しての失敗など、普通であればそこで終わっ てしまうようなエピソードに事⽋かない。そこがまた⼈を惹きつけてやまない 魅⼒となっている。 魅⼒的な個性のまわりにこれまたさまざまな才能をもった⼈々が躍動する。その代 表格が、⽇銀の深井英五、⼤蔵省の森賢吾といった⼈々である。またグイド・フルベ ッキやアラン・シャンドといった「お雇い外国⼈」たちとの⻑く深い交流、森有礼、 前⽥正名からの影響も⼤きい。とくに前⽥の紹介で知遇を得た⽇銀総裁の川⽥⼩⼀郎 は、是清の⼈⽣を⼤きく変えた。これらの⼈々から重層的にネットワークが形成さ れ、最後にクーン・ローブ商会のヤコブ・シフを動かす⼒へとつながっていく。 後半⽣のクライマックスは、⽼⾻にむち打ちながらの⾦本位制即時停⽌の断⾏と昭 和恐慌からの脱却、そして軍部の要求に屈せず、公債漸減策へ転換する場⾯である。し かし、この⼀連の政策はあくまで表⾯のことにすぎない。是清がなぜデフレ不況の根 本治療をおこなえたのか。その核⼼は次の⾔葉に集約されている。⽈く「⼈ の働きがすなわち富である。⼈の働きをあらわすものが物資である。物資の⾼くなる のはすなわち⾃⼰の働きが⾼くなることである。(中略)この働きにいかにして相当な ところの価をもたせるかということの政策が根本政策である」と。今、これをきちん と⾔える政策担当者はいるのであろうか。 ※『産経新聞』2024年7月14日朝刊書評欄に掲載いただきました。なお書評の内容は下巻も合わせてのものです。
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2010年代の前半頃から、市井の経済学愛好家を中心に「リフレ派」と呼ばれるグループが現れ、財政・金融論壇を賑わせてきた。そのリフレ派の模範として度々名前が挙がっていたのが高橋是清であったが、残念ながら私は経済学徒でありながら日本史や経済史の学習にはさほど熱心でなく、高橋是清が成し...
2010年代の前半頃から、市井の経済学愛好家を中心に「リフレ派」と呼ばれるグループが現れ、財政・金融論壇を賑わせてきた。そのリフレ派の模範として度々名前が挙がっていたのが高橋是清であったが、残念ながら私は経済学徒でありながら日本史や経済史の学習にはさほど熱心でなく、高橋是清が成した財政・金融政策や当時の経済情勢を詳しく知らなかったため、リフレ派vs反リフレ派の論戦をただ傍観しているだけであった。 今般、高橋是清の評伝が出版されたことをSNSで知り、十数年の時を経て改めて学び直そうと思い、本書を手に取った。 上巻は出生から日露戦争終戦までの半生が綴られている。 米国での「奴隷」生活や芸妓のヒモ生活、ペルーでの銀山投資失敗などのエピソードも読み物として面白いが、やはりハイライトは日露戦争での戦費調達である。 大規模化する戦闘に比例し膨らむ支出により金が国外へ流出する中、戦費確保と金本位制維持に必要な正貨調達のため、米国・英国での外債発行を任された高橋是清。当初、極東の新興国である日本への信用は極めて低かったが、米英銀行団との粘り強い交渉とリレーション構築により、初回の外債発行は何とか成功。その後も戦況や欧米各国の経済情勢、外交バランスの推移により刻々と発行条件が変わる中、都合6度の資金調達を成功させた機敏な立ち回りは圧巻であった。 阪谷芳郎の「戦争とは7割が財務、残りの3割が戦闘」の言も強ち嘘ではないと思わせる、著者の描写ぶりも素晴らしかった。
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