商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 2024/02/20 |
JAN | 9784004320098 |
- 書籍
- 新書
ジェンダー史10講
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ジェンダー史10講
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商品レビュー
3.9
11件のお客様レビュー
ジェンダー初学者としては、目からウロコの内容だった。特に、第5講「家族を歴史化する」、第6講「近代社会の編成基盤としてのジェンダー」は、視点の変更を迫られるものだった。 以下の点は、本書で特に衝撃的に受け止めた点として概略をメモしておく。 ・ルソー、エミール、服従は女性の自然...
ジェンダー初学者としては、目からウロコの内容だった。特に、第5講「家族を歴史化する」、第6講「近代社会の編成基盤としてのジェンダー」は、視点の変更を迫られるものだった。 以下の点は、本書で特に衝撃的に受け止めた点として概略をメモしておく。 ・ルソー、エミール、服従は女性の自然の状態、夫に従いつつましく家庭を守る妻の像を描いた。 ・カント、人間の理性による自由な決定が不可能として身分制を批判、それができる成熟状態に達せられるのは男性だけで、女性は一人前でない「未成熟状態」の存在と考えた。これは「自然の性差」であると考えられた。それを後押ししたのは、17世紀の科学革命の台頭だった。近代科学、解剖学による身体的な差異に意味を付与。 ・フランス革命。女性も参加。1792年の共和制の樹立後、女性の選挙権、政治参加を否定。その能力に欠けるという理由。 フランス革命は、男性の公領域、女性は私領域という公私二元的ジェンダー秩序を基盤として近代市民社会が形成されていく、その出発点ともなった。 ・ドイツ、フィヒテ。夫婦関係における男女の愛の形の本質的な相違をベースに、妻の愛が夫に献身するもそであるのに対して、夫の愛は妻の献身に自然の寛大さで応えるものだとし、これにより夫婦の人格的一体化が成り立つと考えた。
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ジェンダーとはなんだろう。 本書は女性史について10個のポイントを挙げて解説する。 自分自身がイメージしていたものが歴史的に見るとある種思い込みであったことに気づかせてくれた。 例えば、一言で「フェミニズム」といっても母性主義に則ったもの(日本では平塚らいてうなどが代表)であっ...
ジェンダーとはなんだろう。 本書は女性史について10個のポイントを挙げて解説する。 自分自身がイメージしていたものが歴史的に見るとある種思い込みであったことに気づかせてくれた。 例えば、一言で「フェミニズム」といっても母性主義に則ったもの(日本では平塚らいてうなどが代表)であったり、 ウーマンリブに否定的であったりと、決して一枚岩ではないことは興味深い。 また、かつて私が学んだ歴史教科書においては、女性が入っていようがいまいが、人々は一緒くたに「個人」「民衆」との記載であった。その上で女性参政権は〇〇年、などの注釈だったと記憶している。 しかし現在の歴史総合ではジェンダー配慮記載になっているとのことで、改めて勉強をしたいと感じた次第である。 意外だったのは第9講の「労働」である。 女性の労働というと、『女工哀史』に代表されるような受身的存在の犠牲者、という印象が強かった。 (「ああ飛騨が見える、飛騨が見える」と言って亡くなった女工のイメージあるいはインパクトが強い) しかし実際は時間管理改善など抵抗の側面もあり、必ずしも可哀想で搾取されてばかりだったわけではないようだ。 とはいえ、繊維工業では、男性が親方、職人としてアイデンティティを保っていたのに対し、女性は普及品の作成、良き嫁としてのあくまで一技能という位置付けに置かれていたことは変わらぬ現実としてあることも忘れてはならない。 第10講は本書の中で最も興味深い。 端的にいえば女性は必ずしも戦争中の被害者としての側面のみにあらずということ。 著者の専門とするドイツ社会、第二次大戦中は自ら戦争に協力をしていた女性たちの存在も指摘する(当然日本でもだ)。 男性独裁だけではない負の側面もまた見つめる必要があるだろう。 一方で、戦争中の性暴力はプロパガンダでもある。 この国は女を守れない国、弱い国であるというアピールができるからだ。 今なお続く紛争を思い、女性や子供のために何かできないかといつも考えている。 社会を考える上で、男対女ではなく、フラットに見つめることは大切な要素だ。 それぞれの言葉を丁寧に読み解くこと、結論ありきで研究をしないこと、その難しさと必要性を感じる本であった。
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★★★ 読めてよかった この本では、主に元来の「男性の視点のみ」から語られてきた歴史を批判して登場した女性史の成立・女性の権利の歴史などを追っていくものだ。例えばルネサンスは従来の歴史では芸術の復興などとポジティブな見方をされているが、女性の視点から、特に富裕層の女性からすると...
★★★ 読めてよかった この本では、主に元来の「男性の視点のみ」から語られてきた歴史を批判して登場した女性史の成立・女性の権利の歴史などを追っていくものだ。例えばルネサンスは従来の歴史では芸術の復興などとポジティブな見方をされているが、女性の視点から、特に富裕層の女性からすると、恋愛・結婚の自由を取り上げられた、『不幸な』歴史だった。 意外性はあり、また現代のジェンダー観は近代以降に急速に作られたものだったという指摘は大変興味深い。しかし一方で、女性史は女性視点での資料があまり残っていないために推論で語られやすいという特徴も見受けられた。この点を解消できなければ筆者の、女性史はもっと重視されるべきという主張には賛同できないと思った。
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