商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 2023/08/29 |
JAN | 9784002710839 |
- 書籍
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関東大震災と流言
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関東大震災と流言
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商品レビュー
4.5
2件のお客様レビュー
すごくよかったです。これを発掘して本にした編者の目は素晴らしい。とんでもなく切れ味鋭い批判が混じっていて、虐殺を引き起こした過剰な恐怖の根底に日頃虐げていた自覚があったことや、有事には物の価値だけでなく人間の価値も不定になることなど、大変に身につまされました。
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勘違いしていたけど、「関東大震災と流言」全般を論じた本ではない。副題にある通り、当時の画家にして文筆家・「水島爾保布(みずしまにおう)発禁版体験記を読む」本だった。ところが、これがすこぶる面白い。一級のノンフィクションだった。それが何故今まで埋もれていたのか?それは、発行即発禁本...
勘違いしていたけど、「関東大震災と流言」全般を論じた本ではない。副題にある通り、当時の画家にして文筆家・「水島爾保布(みずしまにおう)発禁版体験記を読む」本だった。ところが、これがすこぶる面白い。一級のノンフィクションだった。それが何故今まで埋もれていたのか?それは、発行即発禁本になって、問題のノンフィクション丸ごと一切世の中に出ていなかったからである。前田恭二さんは、インターネット検索によって、国会図書館に改訂版が出る前の検閲本があるのを発見した。生々しい検閲官の赤線まである。 「図書」9月号「こぼればなし」にこの様に紹介されている。 「(略)本書は、検閲により葬られた水島の被災体験記「愚漫大人見聞録」を翻刻し全文収録しました。丁寧な注と解説も付き、日本近現代美術史を専門とする前田恭二さん(武蔵野美術大学教授)渾身の編著です。 〇 水島の自宅は下町・根岸にありました。本書のなかでも、朝鮮人暴動のデマをめぐる近所の庶民の会話が、迫真性をもった重要な記録となっています。 〇 「『…朝鮮人だの主義者だの位で納まりやまアいゝ方ですぜ。…朝鮮人と日本人とでさへいゝ加減間違へて、大工だの金魚屋の爺さんなんか迄殺つちまふんだから、対手が毛唐だとなつたら、さアどれがロシアでどれがアメリカだか薩張(さっぱり)見当がつきやしません。…』と、運送屋の親方がいつた。」「『一体鮮人や主義者だつていつてるが、そいつ等が何かしたのを見たつてものは一人もねぇぢやねぇか』と、西瓜を嚙かじつてゐた車屋のカツさんがいつた。『ねぇ親方、幽霊話と同じやうに……。』」(同書六四頁)。 (略) 〇 『関東大震災と流言』「おわりに」で前田さんが書かれているように、「同質的な意見が増幅される情報環境が広がり、陰謀論などの温床となっている」現在、「そこに災害などで社会が混乱に陥る事態が出来した場合、何が起こるのか」、恐ろしくなります。」(同書91頁) あまり付け足すことはないけど、つらつらと思うことは多かった。 友人の幡恒春という画家もあらぬ疑いをかけられて上野公園で襲撃された。画家だからスケッチをしに公園に行くと、「17、8ばかりの少年と25、6の青年が、竹槍と鉄棒を持って」「何してる」という。「絵図面取ることが焼き打ちの準備だろう」野次馬が次々とやっちまえ、という。巡査がやってきても、止まらない。けしかける巡査までいた。幡さんは大怪我をする。(9月4日)。 社会主義者の虐殺は警察の甘粕殺害、朝鮮人に対しては亀戸の地名が有名ではあるが、本書を読むと、そんな特殊的に起きたことではなかったのだとわかる。「井戸に毒薬」などの不穏な噂は数日経った根岸などの片田舎にあっという間に伝播しているのが、空恐ろしい。その中で、水島氏や、安政大地震の頃幼少だった「ボー鱈先生」という地域の古老、あるいは車屋のカツさんのような真っ当な意見が生まれて、いたるところで「暴走」を回避していたのかもしれない。至る所、ということは、回避したところもあれば更に暴走したところも至る所にあったということなのだろう。 2008年、中央防災会議という専門家の調査会がまとめた報告書によれば、殺傷事件による犠牲者は「震災による死者数の1-数%」との見解を示したらしい。関東大震災の死者数は約10万5千人、1%は約1050人に相当し、その数倍に及ぶ可能性があると言うことだ。つまりそれだけの「殺人」が行われたわけだ。最近「福田村事件」という映画を見たところ、刑罰に服した者は極めて少ないし、その2年後の昭和天皇の誕生で、多くは恩赦に預かったらしい。 そんなこんな含めて、東京都知事は「事件」については一言も語らない。
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