商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
発売年月日 | 2023/05/09 |
JAN | 9784309031088 |
- 書籍
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風配図 WIND ROSE
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風配図 WIND ROSE
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商品レビュー
3.2
7件のお客様レビュー
自分で家系図と人間関係をメモしてみたら、スムーズに読み進めることができました。 描かれなかった40年間も読んでみたい!
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12世紀。バルト海に浮かぶゴットランド島に住む15歳の少女ヘルガ、ノヴゴロドの貿易商の完全奴隷であるマトヴェイ、リューベックの有力者の妹であるヒルデグントを中心に、交易の新たな時代の夜明け前を描く歴史小説。 てっきり決闘裁判がクライマックスにくるのだと思っていたらそこは前座。...
12世紀。バルト海に浮かぶゴットランド島に住む15歳の少女ヘルガ、ノヴゴロドの貿易商の完全奴隷であるマトヴェイ、リューベックの有力者の妹であるヒルデグントを中心に、交易の新たな時代の夜明け前を描く歴史小説。 てっきり決闘裁判がクライマックスにくるのだと思っていたらそこは前座。ヘルガが海にでてからが本番なのだが、三人称視点とマトヴェイの一人称視点が入り混じることにどういう効果があるのかよくわからなかった。ヘルガはゴットランドの言葉も読み書きできないという設定なので、ヘルガに語らせなかったのには意味はわかるのだけど。 人称問題も含めてヘルガが主人公だとも言い切れない群像劇であると思う。だからこそ要所で挟まれる戯曲形式が効いていて、ここは傍白でそれぞれの思惑が語られるので面白い。決闘裁判の承認をめぐる討論のあたりは「ヴェニスの商人」のオマージュなのかなと思った。ヘルガはめちゃくちゃ戦闘的なポーシャ。 ただ、最後まで読むとプロローグだけで終わってしまった感が強い。ヘルガが女性貿易商として成り上がる冒険小説になるかと思えばそうじゃないし、ならばユーリイとマトヴェイが父を超える教養小説になるかと思えばそうでもなく、ヒルデグントの謀略がゴットランドを凋落させるといった単純な話でもない。読者と一番心理的距離が近いのはマトヴェイだけど、奴隷なので行動できないし観察者としても半端な書かれ方である。 歴史的な記述が続くときにも一本の美学が通っている皆川節を読むだけで楽しいといえばそうなのだけど、地図上に人物を配置して力学的関係を説明し、さぁドラマはこれからだというところで突然何十年も時を飛ばされて置いてきぼりを食らった気分。でもだからタイトルが〈風配図〉なのか。
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十二世紀のバルト海の島に住んでいた姉妹が、決闘裁判を機に思いもよらない広い世界へと繰り出す。冒険譚であり姉妹の絆を描いたシスターフッド的な物語でもあり、酷薄な身分制度や欲得や打算まみれの人間模様を浮き彫りにした歴史小説の側面も持った小説です。 それだけ中身が濃いながらも、合間に...
十二世紀のバルト海の島に住んでいた姉妹が、決闘裁判を機に思いもよらない広い世界へと繰り出す。冒険譚であり姉妹の絆を描いたシスターフッド的な物語でもあり、酷薄な身分制度や欲得や打算まみれの人間模様を浮き彫りにした歴史小説の側面も持った小説です。 それだけ中身が濃いながらも、合間に戯曲形式を挟み、きわめてさらりと短く的確に状況を描いていく文体で意外なほどするりと読み進められます。過去の長編大作での歴史と個人の運命をより合わせた重厚さとはまた違いますが、十二世紀という馴染みの薄い時代を的確に感じさせる細やかな小物や社会風俗の描写はさすがの一言でした。 ただ主な視点となる二人の少女と一人の奴隷の物語としては、もっと踏み込んだディテールがあれば、と思わなくもありません。終盤の邂逅は美しい場面でしたが、急ぎ足に見え、少々もったいなく感じたのも事実です。 それでも、齢90歳を超える作者が綴り上げた物語として、これほど瑞々しく自然の風景を捉え、抗えない差別や批難のもとで生き抜こうとする若者たちを描いていることは凄いなと改めて感じ入るばかりです。次作も期待します。
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