商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 白水社 |
発売年月日 | 2023/01/21 |
JAN | 9784560099155 |
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激戦地クレタ島脱出から二年が経ち、ガイ・クラウチバック大尉はロンドンで無為な日々を送っていた。王立矛槍兵団(ホルバディアーズ)の戦友たちが戦地へ向かうなか、もうすぐ四十歳という年齢を理由にひとり後に残されたガイは、開戦時に抱いた崇高な大義を見失いつつあった。 一方、クレタ島でガイの命を救ったリュードヴィック曹長はいまや情報軍団少佐に昇進し、戦場で書きとめた覚書きに基づく『瞑想録(パンセ)』の出版を画策中。 ガイの元妻ヴァージニアは予期せずトリマーの子を身ごもり途方に暮れていた。ついに情報将校としてイタリア方面への派遣が決まったガイは落下傘降下訓練に参加するが、訓練中の負傷で療養生活を送るはめに。そこへ堕胎を頼める医者が見つからないヴァージニアが訪れる。事情を聞いたガイはすべてを受け入れ、ヴァージニアと再び結婚することに。ガイの派遣後、ヴァージニアは無事に息子を出産するが、ほどなくして空襲に見舞われ命を落としてしまう。 イタリアを経由してユーゴスラヴィアに派遣されたガイは、抑留されたユダヤ人の解放をもとめて奔走する。そのなかで、イタリア語の通じるカニイ夫人と交流を持つようになる。 パルティザンの視察にきた連合軍幹部へのデモンストレーションとして、敵の要塞への攻撃作戦が準備される。作戦決行の直前にドイツ軍が現われ作戦は中止されることになるが、リッチー=フックはひとり突撃し射撃されるのだった。 その後イタリアに呼び戻されたガイは、別れを告げにカニイ夫人を訪れる。必ずユダヤ人を脱出させると約束するガイに対して、カニイ夫人はこう答える。 「私も以前は、ここから去ることさえできれば幸せになれると思っていました。でも、悪から自由な場所などあるでしょうか? 私には、世界のいたるところに戦争への意志が、死の願望が存在しているように思えます。」 しばらくのち、ガイはイタリアでユダヤ人脱出の知せを受けるが、そこにカニイ夫妻の姿はなかった。 戦後、姉の旧友の娘・ドメニカと結婚したガイはイタリアの城をリュードヴィックに売却し、故郷のブルームで農園を経営していた。その財産は、長男であるトリマーの子・ジャーヴィスに受け継がれることになる。 ガイからクレタ島脱出の詳細について尋ねられたくないリュードヴィックがとる落下傘訓練所での奇行や、妊娠にてんやわんやするヴァージニアなど、前巻よりコミカルなシーンが増え読みやすい。 一方で、なかなか戦場に送られないガイは心をすり減らし、戦争の勝敗にも関心を失っていく。そして、ついには時代の流れに、人生に、無条件降伏するのだった。
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