凛子ちゃんとひもすがら(3) ゼノンC

七瀬八(著者)

• 販売会社／発売会社: コアミックス
• 発売年月日: 2022/12/20
• JAN: 9784867204566

商品レビュー

2023/01/05

春乃が持ち込んだ大金によって継続された凛子と春乃の歪な同居生活
これまでは凛子が自身のお金によって他者に寄生する春乃を繋ぎ止め母が帰るまでの時間稼ぎに利用している形だった。でも春乃のお金によって生活が続くなら話は変わってくる
母は帰らない。けど春乃を放逐する事はもう出来ない。今が続く限り
そんな生活に目的は無いから、実態は虚無が続くようなもの
だから春乃自身が何故凛子と一緒に居たいのか、そしてこの生活の先に何を目指すのかという点を考えなければならないわけだ

でないと凛子の精神は危ういまま。14話で凛子が春乃を束縛したいなんて発想が出たのもそうした歪さを反映してのもの
ここで春乃の変化を感じられたのは良かったな。心結が指摘するように以前の春乃だったら凛子が何故あのような発言をしたかなんて考えず全てを受け容れていた筈。でも今の春乃は凛子の言動が危ういと気付き、それを解決したいと感じている
それは空虚だった二人の生活を変える第一歩

ここで「母親が帰ってこないなら父親は？」と疑問に思うのは当然の流れなんだけど、凛子があの状況でも連絡を取らないという時点でねぇ……
凛子の回想や春乃の突撃訪問によって明かされる凛子父の実態、彼なりの道理は有るのだろうと察せられてもそこに人間性は感じられない。あまりに独り善がりで冷たい人間
これを頼れないと春乃ですら思うのは納得の人物像

ただ、春乃はこれまでヒモとして生きてきた、凛子と全くの赤の他人。そんな人間が小学生女児との生活を守るなんて無理がある
春乃のバイト面接がひたすらに失敗したり、ご近所から不審者と思われてないかとびくびくするのはそういう理由
また、もう一つの問題として浮かび上がってしまうのはラストの描写か…。春乃は凛子の両親はもう頼れない人間だと判断した。だから凛子が探している凛子母を見つけても隠してしまうのは理解できる
でも、それはもしかしたら幼い女の子が当然のように享受できる家庭の温かみから遠ざけてしまう行為かもしれない

18話冒頭にて改めて示された未来の凛子。あの風景に春乃の姿は無いように思えるが、春乃の献身が如何にあの未来へ繋がっていくのか見届けたいね