人生と運命 新装版(1)

ワシーリー・グロスマン(著者), 齋藤紘一(訳者)

• 販売会社／発売会社: みすず書房
• 発売年月日: 2022/08/11
• JAN: 9784622095385

商品レビュー

2024/08/17

『人生と運命』はグロスマンの命がけの告発の書です。 ソ連において体制批判はタブー中のタブーです。強制収容所送りや死刑を覚悟しなければなりません。グロスマンはこの作品を書き上げるもKGBの家宅捜索を受け没収されてしまいます。そして当局から危険書物扱いをされ「今後２～３００年、発表は不可」と宣告されます。 「今後２～３００年、発表は不可」という宣告のものすごさ。この小説がどれだけソ連当局にとって危険なものだったかがうかがえます。

2023/02/23

執筆刊行を目指した著者のタイプライターリボンまで没収され、友人の写しから国外に出て出版されたと言う大変な事実を元にした小説。

小説とは言え、歴史的事実が織り交ぜられているから、読んでいて錯覚してしまう。
文体などはとてもロシア的で日本人には少し読み難いものがある。
特に人物の名前が本名と呼び名と愛称が現れて理解しても混乱してしまう。
ドストエフスキーやトルストイを読んだ事がある方ならそれを心得ているだろう。

ストーリーはかなり厚く、そしてダークな真相に迫るもの。迫害、強制、いつ命が尽きてもおかしくないものだ。
新装版で読むことになったこの本は、現在のロシアがウクライナ侵攻をやめないことと被り、かつてスターリンが行った政策まで遡り関係性を理解することとなった。

読み終えたのはたった一冊で2.3と続きがあるのだが、かなり分厚い本であり且つなんとなく読んでいた感覚でハッキリとストーリーが追えていない気もする。
2を手にして読み始めるのは少し先になりそうな気がする。

2023/01/29

ファシズムに奉仕すると心に決めた人間は、死をもたらすおぞましい奴隷的服従が唯一たる真実の善であると宣言する。裏切者の心は人間的感情を放棄しないまま、ファシズムによって行われる人間性の最高の形態であると宣言し、人々を純潔で価値のある命と不純で価値のない命とに分けることに同意する。自己保存を図りたいという情熱が、本能と良心の妥協主義という形で表現されたのである。