商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 東京創元社 |
発売年月日 | 2022/07/29 |
JAN | 9784488028749 |
- 書籍
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とらすの子
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とらすの子
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商品レビュー
4
28件のお客様レビュー
以前に試し読みだけして気になっていた作品。さくっと読めて面白かったです。ある意味ハッピーエンドですし、人間(化け物?)の怖さを煮詰めたような作品です。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
無差別殺人が繰り返し起き報道されるも、事件は一向に糸口が見えず人々の興味をそそるだけ。 そんな中事件に関わる団体があり、マレ様という人物が浮かび上がるが─というお話。 カルト宗教的ホラーかと思いきや、オーメンでした。 * 「私、もう、時間が」 ミライがそう痛らしたのとほぼ同時に、地面が揺れた。地震かと思ったのも束の間、私は衝撃で、中腰のまま地面に叩きつけられた。咄嗟に目を瞑る。 耳鳴りがする。それ以外に何も聞こえない。 うっすら目を開ける。人が倒れこんでいるのが見える。白いワンピース。正面のテーブルに座っている若い女の子だ。放心した様子で固まっている。その横の子も、同じだ。段々耳が慣れてくる。ばたばたと駆け回る音。悲鳴。電話をかけている人もいる。私はゆっくりと体を起こす。顔が熱い。顔になにかがかかっているようだ。そこが熱を持っている。私は顔を左手で揃った。 赤い。鼻腔がひくついた。鉄錆の臭い。痛い、と叫んでから気付く。痛くない。これは私の血ではない。じゃあ、誰の。一体何が起こったのか分からない。本当に分からないのだ。爆発事故?それはない。 殺人が突然目の前で起きた状況です。 目に映る状況を、見えてはいるけれど認識する 前に脳が混乱して処理できない そんなパニック が上手すぎて、それまでの文脈をほっぽり出して こちらも主人公と同様に物語に入り込んでしまい ました。 死ぬ。 死ななくてはいけない。 価値のない、どうしようもない人間。 蹴られて壁に頭を何度も打ち付けられると目の奥に星が飛ぶ何度も飛んでから急に痛くなる。 痛みと涙と鼻水はセットで鼻水で卓腔が埋まって息が吸えなくなる喉の奥が痙準して変な音がする泣いても誰も来ない目の前の手が悟を掴む足に縋りついてやめろと叫ぶそれでも誰も助けに来ない誰も来ないお風呂に入れない臭い服虫歯だらけの口同級生に馬鹿にされ顔が腫れあがっていると面白いと言われる豚と言われる泣いても誰も助けに来ない 見てはいけないものを見てしまい恐怖のために 過去に受けた虐待がフラッシュバックしている 状況です。 句点を省き能に怒涛の情報と感情が溢れ出す脈絡 のなさ、絶品〜! 文章がなんてお上手〜! * 強い人と一緒にいると疲れるんですよ。坂本さんもそうです。確かにあなたのことを友達として好きだったかもしれない。でもね、彼女が死を選んだのは、あなたのせいですよ。あなたみたいに、辛い目に遭っても前向きで、努力して自分の人生を切り開いていく人のことを見ていたら、誰だって、自分が惨めで死にたくなるんじゃないかしら。眩しいのですよ。あまりにも正しくて。 正論を粛々と体現していくあなたはとても暴力的だ。 "あなた"はかわいらしく、仕事に一生懸命で、 まるで愛されたことしかないように純粋でかわい い容姿。その上不幸に挫けず努力できるという 「設定」。 "あなた"に対して私が思ったことがまさにこうし て言われていてなんとも言えないです。 私は心が弱い側の人間なので、いつトラスの会員 たちのような決断をするかもしれない。 どんなに弱くてもがんばれなくても逃げても、 本当は全然いいから、罪悪感に駆られず最後は 彼らのような決断をしない努力だけはしたいと思 いました。 私はどこかで「悟のために頑張っている自分」に陶酔していなかっただろうか。自分のことを、他の人よりずっと努力していて、立派な人間なのだと思わなかっただろうか。きっと、そうだった。だからそれが悟にも伝わった。「私がお前のためにこんなに頑張っているのだからお前もちゃんとしろ」悟はそれを感じ取ったのだ。私が悟を引き取り、生活費を出しているのは私が勝手にしたことなのに、恩を売るような真似をしていたのだ。 上記に対する"あなた"のアンサーです。 キツ〜〜!
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怖面白すぎる。 この著者は、不快な美しい絶対悪を描くのが本当に上手。 途中からすっかり希彦に魅了され、結末が知りたくて知りたくて、一気読み。 きれいすぎる景色を見ると、怖くなる感覚を知っているけれど、希彦もそんな感じなのだろうか、と想像しながら読んだ。 そして、この著者の醍醐味...
怖面白すぎる。 この著者は、不快な美しい絶対悪を描くのが本当に上手。 途中からすっかり希彦に魅了され、結末が知りたくて知りたくて、一気読み。 きれいすぎる景色を見ると、怖くなる感覚を知っているけれど、希彦もそんな感じなのだろうか、と想像しながら読んだ。 そして、この著者の醍醐味、不条理な怖いものが出てきてがっつりホラーに加え、人の暗く醜い悍ましい性根の怖さがひたひたと物語全般にあって、今作も終始ぞわぞわした。 希彦の容貌も相まって、映像美が秀でた映画を見ているような物語。 「ミッドサマー」とはまた違う、美しさに“ぽ〜”っとなりながら、地に足がつかないまま怖さを噛み締める読後だった。
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