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誰も正常ではない スティグマは作られ、作り変えられる
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | みすず書房 |
発売年月日 | 2022/05/11 |
JAN | 9784622090915 |
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誰も正常ではない
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〈資本主義〉〈戦争〉〈身体と心〉をキーワードに、精神医学とスティグマの歴史、スティグマの形成・理解・新たな発生が繰り返されるメカニズムを辿っていく。 著者はシカゴで曽祖父から父まで三代続く精神科医の家系に生まれた文化人類学者という、精神医学史について独自の視点の持ち主。家族史...
〈資本主義〉〈戦争〉〈身体と心〉をキーワードに、精神医学とスティグマの歴史、スティグマの形成・理解・新たな発生が繰り返されるメカニズムを辿っていく。 著者はシカゴで曽祖父から父まで三代続く精神科医の家系に生まれた文化人類学者という、精神医学史について独自の視点の持ち主。家族史的なエッセイの部分もあり、父と息子の反発からフロイトとの疑似親子関係まで語られてよくできた話だなと思ってしまう。 誤解を恐れず言うならば、本書はとても面白い。だが、その面白さは読者の好奇心に訴えかけるように極端な症例やアサイラム(隔離施設)の酷い有様を書いたものとは違う。むしろそうした人びとが無条件に信じている「正常」という考え方が、社会の何を守るために生まれてくるのか、そのメカニズムが解き明かされていくところが面白いのだ。 メインとなるのは精神疾患と発達障害だが、身体的な障害は勿論、同性愛者、依存症、貧困層、先住民、有色人種、女性など、負のレッテルを貼られた属性は一通り取り上げられている。社会が押し付ける劣等感、〈スティグマ〉が本書の主題だ。 資本主義社会は生産性に基づいて「正常」を定め、非生産的とみなした属性を"隔離"あるいは"矯正"しようとする。〈normal〉という言葉は20世紀半ばまでは専門用語で、それを一般に広めた論文の内容は「同性愛は統計的にnorm(標準)」という報告だったと知って驚いた。言葉だけが流布して都合よく歪められ、マイノリティを排除しようとする側の武器になってしまったのか。 「ヒステリー」が女性の病だと考えられていた時代から、多くの兵士が精神疾患にかかる戦争の時代に突入して精神医学のレベルが飛躍的に上がったというのも、未だに繰り返されている医学上の性差別だろう。軍事精神医学の進歩は民間にも影響を及ぼし、社会全体が戦争の記憶を共有することで精神疾患への理解も進んだ。 特にベトナム戦争で「PTSD」という病名が生まれ、医師と患者の共通語として定着した影響は大きい。フェミニズムの運動家は従来の性差別的診断を批判し、フロイト以来軽視され詐病扱いすら受けてきた性的虐待・レイプ・DV被害者の精神疾患も兵士と同じように認められるべきだと訴えた。 第二部までは医学史的な記述が中心だが、第三部〈身体と心〉からは著者のフィールドである人類学的なアプローチになる。身体と心は切り離せるという前提で進んできた西洋医学界を批判する内容だが、「障害者が自己主張すること」にすら嫌悪感を隠さない人間が目につく日本の現状に照らし合わせてもグサグサと刺さってくる。 そもそも日本ではスティグマが問題視されることすら少ない。多くの公共の場で障害者が我慢するのは当たり前であり、不自由を感じるのは自己責任だと考えられている。逆に、マジョリティが障害者のために場所を用意するのは"譲歩"であり"我慢"であって、自分たちが一方的にルールを押し付けているという意識が乏しい。ホームレス排除のためのさまざまな"工夫"なども含め、「快適な暮らし」から人びとを締めだし、透明化することに対してあまりにも無邪気すぎる社会。「公共」とは何なのかを問い直す必要があると思う。 著者は自閉者の娘を取り巻く環境の変化を通じて、スティグマを生みだすのが文化なら、文化によってスティグマを断ち切ることも可能であるはずだと結論づける。日本の場合は、文化的なアプローチにしても言葉だけを借りてきて表層的な議論に終始しているシーンがまだまだ多すぎると思う。正しい/正しくないの前に、借り物の言葉を日本社会の多様性のために熟していく方法を考えなければならないし、「なぜ日本語では適切な言葉が生まれてこないのか」という根本を直視しなければ意味がないのではないだろうか。 このひと月は精神疾患関連のノンフィクションを続けざまに読んできたが、総まとめのような一冊だった。SNSで繰り広げられる不毛な議論について真に目を向けるべきことが詰まっているような本で、しかも本という形態をとっているがゆえにページ数の分だけこちらにたっぷりと考える時間をくれるのが有難かった。10代でこの本と出会えたら、「正常」を一歩引いた視点から眺めるための考え方をもっと早く手に入れられた気がする。全ての高校の図書室にこの本があってほしい。
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[鹿大図書館・冊子体所蔵はコチラ] https://catalog.lib.kagoshima-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC14387938 [鹿大図書館学生選書ツアーコメント] 「正常とは有害な幻想である」 「スティグマは」日本語の「...
[鹿大図書館・冊子体所蔵はコチラ] https://catalog.lib.kagoshima-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC14387938 [鹿大図書館学生選書ツアーコメント] 「正常とは有害な幻想である」 「スティグマは」日本語の「偏見」や「差別」に該当する言葉だと言われておりますが、この本では精神疾患や発達障害に対する「偏見」や「差別」を主に扱っており、 その変遷を社会的・文化的に述べた本となっております。 スティグマがこれまで構築と再構築を重ねてきた歴史を持つからこそ、私たちはその 流れを変えることができる可能性を持っていることに、著者は気づかせてくれます。 私たちが分けているであろう正常・異常の境界は存在するものなのか、考えさせられる一冊です。
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社会で様々な精神病が認知され、受け入れられ、配慮されるようになった昨今、「普通」でいる人の方が少なくなったように感じる。しかし、現代に至るまで「見えない」病気である精神病が誰もがおこりうる病として認知されるのには様々な問題があり、多くの観察と時間を必要とした。そしてその背景には多...
社会で様々な精神病が認知され、受け入れられ、配慮されるようになった昨今、「普通」でいる人の方が少なくなったように感じる。しかし、現代に至るまで「見えない」病気である精神病が誰もがおこりうる病として認知されるのには様々な問題があり、多くの観察と時間を必要とした。そしてその背景には多くの人が忌み嫌う戦争の影があり、戦争が精神病への捉え方と深い関わりがあることを忘れてはいけないと感じた。 『フロイトが患者にカウンセリングする際、入口と出口を別々に設置得ることで患者が誰かに治療中であることを悟られないようにしていた。また、患者は他の患者と顔を合わせることがなかったため、自分がフロイトの唯一の患者であると思うことが出来た。』という部分にたいして、占いやホストといった閉鎖的な接客業に対しても有効なのでは?と考えた。
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