誰も戻らない アウシュヴィッツとその後 第一巻

シャルロット・デルボー(著者), 亀井佑佳(訳者)

• 販売会社／発売会社: 月曜社
• 発売年月日: 2022/04/21
• JAN: 9784865031294

商品レビュー

2022/08/06

走ることを強いられたある日、十分に速く走れなかった女たちもいた。仲間たちによって25ブロックの扉の間えにやむなく置き去りにされた女たちもいた。彼女達は叫んでいた。「私を覆いていかないで、私を置いていかないで」何日ものあいだ彼女たちは飢え渇いていて、特に渇きは申告だった。彼女達は凍え、ほとんど着るものもなく、わら布団も毛布もなしに板の上に身を横たえていた。瀕死の病人と狂人とともに閉じ込められ、断末魔と狂気の番が自分にめぐってくるのを待っていた。毎朝、彼女達は外に出た。こん棒に撃たれて外に出されるのだった。瀕死の病人と狂人に振り下ろされるこん棒。生きている者たちは、夜のあいだに死んだ者たちを中庭に引きずって来なければならなかった。死者の数も数えなければいけなかったからだ。SSは自分の犬を彼女たちの方にしかけて遊んでいた。収容所じゅうで唸り声が聞こえた。それは夜の唸り声だった。あとには沈黙。点呼が終わった。それは昼間の沈黙だった。生きている者たちは帰った。死者たちは雪の上に残った。死者たちの服は脱がされた。洋服は他の者に提供されることになる。2，3日ごとにトラックが生きている者たちをガス室に箱飫肥、死者たちを焼却炉に投げ込むためにやってきた。狂気はそこに入っていった女たちの最後の希望に違いなかった。生への執着によって狡猾さを身に着け、出発の際に脱出する者たちもいた。彼女たちは時として何週間かそこにとどまることがあったが、第25ブロックに3週間以上いたものはいなかった。彼女たち懇願していた。「飲み物を、飲み物を」しゃべる亡霊たちがいた。