商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 法蔵館 |
発売年月日 | 2022/03/28 |
JAN | 9784831877567 |
- 書籍
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世界文学としての方丈記
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世界文学としての方丈記
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『フツーに方丈記』を読んで、方丈記にすっかり魅了されてしまい、このインド出身の方の本も読んでみた。 論文だし、おもしろくなければ途中でやめてもいいや、と思ったけど、ちゃんとおもしろくて最後まで普通に楽しく読んだ。 タイムマシンがあったら、鴨長明に、「アンタの本、けっこう早い時期...
『フツーに方丈記』を読んで、方丈記にすっかり魅了されてしまい、このインド出身の方の本も読んでみた。 論文だし、おもしろくなければ途中でやめてもいいや、と思ったけど、ちゃんとおもしろくて最後まで普通に楽しく読んだ。 タイムマシンがあったら、鴨長明に、「アンタの本、けっこう早い時期からいろんな言語に翻訳されてて、なんとインド人が論文まで書いちゃってるよ~」と教えてあげたい。生きている時はやや負け組だったけど(まあそこが彼の魅力の一つなんだけど)、死後はグローバルな文化人よ、ソローやワーズワースと比較されてんのよ、そんな日本人、そうそうおらんよ、って。 この本の中で、なぜ早くから翻訳されるようになったか、その理由についていろいろと考察されているけれど、私はシンプルに、「それはズバリ、『短い』からでしょう!」と思うけど・・・って言ったら、身もフタもないかしら。もちろん内容も普遍的でおもしろいけど。 しかし、この本の何に驚いたかというと、夏目漱石の英語力。 大学2年の時に、お雇い外国人として来日して東大で文学を教えていたディクソンという人に指名されて方丈記を訳すことになったらしいが、その時代の純ジャパであの英語力ってどういうことなの、ってくらい語彙が豊富で表現も自然で本当にビックリした。この本の著書も「その表現力の豊かさに驚かざるを得ない」と書いておられたが。 依頼したディクソンも漱石の訳業を高く評価していた、とあったが、きっと漱石は群を抜いて優秀だったから指名されたんだろうと思う。あのレベルの英語を他の学生も普通に書けたとはとても思えない。実際、他の日本人の英訳も本書の中に登場するが、夏目漱石の英文は群を抜いている感じ。 海外ドラマも洋楽もネットもない時代に英語を身に付ける方法って基本は読書だろうと思うので、大量の英文をインプットしてたんだろうなぁ、と想像している。 芥川龍之介も、ものっすごい速さで膨大な量の洋書を読んでいた、とどこかで読んだことあるが、きっと彼らは「英語を身に付けよう」とかそいういうのじゃなくて、とにかく海外からの情報が限られていたために、手に入るものをむさぼるように読んでいたのかなぁと思う。 凡人の私は、いくらでも日本語で海外の情報が手に入る今の時代に生まれたことを感謝しないと、などと思った。 ちなみに、ディクソン先生の英文学の授業はイマイチだというのが漱石はじめ学生たちの評価だったらしいが、先生は英語の教科書や辞書などをたくさん書いていて、それはとても評価が高かったらしい。イディオム集などは当時非常に重宝されていたらしく、もしかして私たちが受験で覚えたフレーズやイディオムが古臭いと言われることが多いのは、このディクソン先生の書いたものをずーっとそのまま使いまわしているからだろうか、という疑惑がわいた。(ありえる) この本ではところどころで何人かの「翻訳論」みたいなものにも触れていたが、私は漱石の翻訳方針に一番共感した。 特に、シェークスピアについて漱石が書いたという次の文章に賛同。 「要するに沙翁劇のセリフは能とか謡とかの様な別格の音調によつて初めて、興味を支持され(る)べきであると極めて懸らなければならない。こゝに注意を払はないで、「晴嵐梢を吹き払つて」と云ふ様な言葉を、「おい一寸来てくれ」と云ふ日常の調子で遣つては、双方共崩れに終る丈である」(夏目漱石「坪内逍遥と「ハムレット」より) シェークスピアは特に音が大事かなぁ、と思う。いや、よく知らないで言ってるんだけども。(笑)
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