商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 放送大学教育振興会/NHK出版 |
発売年月日 | 2022/03/20 |
JAN | 9784595141782 |
- 書籍
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経済政策 改訂版
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経済政策 改訂版
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国、あるいは地方自治体の経済政策の目的は、一般には次の4つが挙げられる、と説明されている。 1)格差の是正 2)完全競争の条件が満たされない場合の対処(不完全競争) 3)狭義の市場の失敗の補正(公共財・外部性) 4)景気対策としてのマクロ経済政策(財政・金融) 本書では、そういっ...
国、あるいは地方自治体の経済政策の目的は、一般には次の4つが挙げられる、と説明されている。 1)格差の是正 2)完全競争の条件が満たされない場合の対処(不完全競争) 3)狭義の市場の失敗の補正(公共財・外部性) 4)景気対策としてのマクロ経済政策(財政・金融) 本書では、そういった「経済政策」について15章に分けて説明されている。 本書が、あるいは、著者の松原先生の説明の特徴的なところは、経済政策のベースとなるべき経済に対しての考え方として、いわゆる「新自由主義」の考え方(本書では「効率-公正モデル」、あるいは、主流派経済学という呼び方)では、限界があるだろうということである。それでも、平時には「効率-公正モデル」の考え方で経済政策は運営できるかもしれないが、いったん危機、あるいは、想定していないような事態が起きた時には「効率-公正モデル」「新自由主義」的な経済運営ではうまくいかないであろう、と主張している点である。それは、極端な例としては、例えば、大災害やコロナ禍への対応等を思い浮かべると分かりやすい。そのような危急の際に、平時と同じ経済政策で危機を乗り越えることは難しいということである。松原先生は、それを、「効率ー公正モデル」に対して、「不確実性-社会的規制モデル」と呼んでいる。実際に危機が起こった際に、あるいは、危機が起こると想定される分野においては、主流派経済学の考え方ではなく、ある程度の、社会的な規制を経済政策に持ち込むべきであるという主張である。 全体的に興味深い内容の本であるが、私が特に興味を惹かれたのは、13章の「市場と経済構造」である。ここでは、第二次大戦後に構築された「日本型経済システム」の説明と、バブル崩壊後の日本経済の不振を日本型経済システムにあるとして、それを改革しようとした、小泉政権下の、いわゆる「構造改革」について説明されており、また、松原先生は、それに対して批判を加えている。 【引用】 構造改革は市場原理主義であり格差をもたらすとしばしば批判されるが、ここで格差の実態は、輸出や金融緩和によって大企業がカネを得ても、そのカネは大企業の株主や大都市、正規雇用の社員に止まり、国内の中小企業や地方、非正規雇用労働者へは流れなかったこと、すなわち同じ市場の中に「分断」が生じたことにある。 【引用終わり】 間接金融方式、企業グループ、下請け、日本的雇用システム、金融機関の「護送船団方式」といった、戦後に構築された「日本型経済システム」は、確かに時代遅れのものが多かったが、それのどこを変えて、新たなシステムをつくるべきかというデザインなしに、構造そのものを破壊してしまっただけになってしまったので、市場に「分断」が生じてしまったこと、その「分断」は全般的に「不確実性」の雰囲気を企業にも消費者にも生んでしまい、投資や消費が停滞したままであること、を松原先生は主張されている。 上記の議論には、私は納得性を感じる。
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