絵の旅人 安野光雅 思い出を語る人たち

伊藤元雄(編者)

• 販売会社／発売会社: ブック・グローブ社
• 発売年月日: 2021/12/05
• JAN: 9784938624286

商品レビュー

2021/12/18

内外の出版社や放送局、画廊などで裏方として安野光雅さんに接し支えてきた方々、古くからの知己による追悼集。カバーの装画やそでの自画像、手書き文字などがまるで形見分けのよう。巻末にはIBBY講演記録集（「空想画房」に収録されている国際アンデルセン賞受賞スピーチの別バージョンと、「空想工房」に収録されているIBBYボストン大会記念講演）と、年譜・記録・（編者による）聞き書きあり。
絵本作家デビュー以前のお仕事のことなど、ご自身で語ることがほとんどなかった興味深いエピソードも少なからずある。どの人の文章からも、安野さんがつねに好奇心と創意工夫の塊で、仕事の面でも人づきあいの面でも出し惜しみのないサービス精神旺盛な人だということがこれでもかと伝わってくる。だれもみな安野さんとの打ち合わせや取材旅行などの時間を楽しみなつかしんでいて、なんともうらやましくなるが、こんなにあれこれの仕事を並行してなさってあちこち飛び回っていた方が、まったく名もない一読者のためにすくなからぬ時間やエネルギーをさいてお相手くださっていたのか、と改めてありがたく感慨深く、奇跡のような時間を思い返している。そして、たくさんの友人や知り合いの待ちかまえている世界に旅立った今、大歓待されてうれしい再会をしているのだろうと想像してみる。
安野作品を世界に紹介したひとりアン・ベネデュースさんが安野さんの訃報を知らされた後、奇しくも3月20日に亡くなった（あとがきより）というのも感じるところの多い話だった。