商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 明石書店 |
発売年月日 | 2021/12/03 |
JAN | 9784750352985 |
- 書籍
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なぜ、イスラームと衝突し続けるのか
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なぜ、イスラームと衝突し続けるのか
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911の後に書かれた20年前の原著を増補した著作だが、ウクライナ戦争の今読むと、戦争に際してのネガティブキャンペーンに人も国もやすやすと乗ってしまうところはまったく同じだと感じる。北部同盟の客分として取材したジャーナリストが北部同盟の言い分を垂れ流すのは大本営発表と同じだというと...
911の後に書かれた20年前の原著を増補した著作だが、ウクライナ戦争の今読むと、戦争に際してのネガティブキャンペーンに人も国もやすやすと乗ってしまうところはまったく同じだと感じる。北部同盟の客分として取材したジャーナリストが北部同盟の言い分を垂れ流すのは大本営発表と同じだというところではっとした。大本営発表は政府がやるものだと思っていたが、たしかに世論を煽り立てるマスコミの報道も大本営発表と言えるだろう。ロシアについてもそうだが、反対側の言い分も取材せずに情報を垂れ流すマスコミの罪は重い。ただ、今の状況でいうと、これだけいろいろ情報源があるのに、偏った情報だけをうのみにして、日本にいるロシア人に罵詈雑言を浴びせるなど過激な行動に出る個人もどうかと思う。 さて、たいへん重要なことを言っているのに読みやすい本だった。反論も想定してそれに対する意見も示している。人としてのムスリムに対する深い理解に基づいた著者の冷静なトーンに説得力がある。 世界中のムスリムは同胞なのだそうだ。そしてラマダンのときには善悪・正邪の識別に敏感になっているとのこと。したがって、ラマダン中に攻撃を続けるのはたいへん良くない。これをアメリカはやってしまった。そうすると、もともと対して関心もなかったタリバンであれウサマビンラディンであれ、アメリカよりは善ということになるらしい。いくらムスリムに対する攻撃ではないと言ってもムスリム側はそうは取らないとのこと。アメリカの攻撃で無辜のアフガニスタン人が殺されるわけなので怒りは深い。そもそもアメリカという国は国民の愛国心と忠誠心を高揚させるために戦争を道具に使うというのは卓見。ウクライナでもまさにそうだ。 ムスリムは国家というものについての考え方が我々とは異なり、主権は神にあるのであって人間にはないので民主主義は成立しない。国家に従うより神に従う方が当然優先される。コーランには個人のことに加えて社会の在り方などについても書いてあるので何事もコーランに従うことになる。むち打ちの刑も残酷なように思われるが、終われば開放されて、日本のように懲役何年というのはないらしい。服役している間の家族に対する差別などを考えれば、その場で終わる方がいいとも考えられる。罪は本人が神に対して償えばいいので、慈悲深いアラーは家族を苦しめるようなことはしないのだそうだ。コーランには「神はなるたけ楽なことを求める」と書いてあるほどで、イスラム教は意外にかなり柔軟らしい。西側の理想ややり方を押し付けるのがまったく間違っていることがよくわかった。 アフガニスタンの女性でブルカ(ヴェールだったかも)をかぶらない人は、信条の問題ではなくファッションとして田舎っぽいから好まないのではないかというのはおもしろい視点。これは西洋的なライフスタイルの恩恵にあずかっている富裕層かもしれないが、貧困層では逆にイスラムに覚醒して自発的にかぶるようになる人もいるらしい。それから、タリバンが頑迷なのは、難民キャンプとマドラサしか知らない人たちだからとのこと。上から目線で西欧のやり方を押し付けても逆効果で、まずは他のムスリムが幸せに暮らしているところを見せるだけでもムスリムとして他の生き方もあることを知らせることができると。さすが人としてのムスリムをよくわかっている。アフガニスタン問題の解決法としてあらゆる勢力の武装解除をして武器を買い取るというのはいいアイディアだと思った。これ以上理不尽な殺戮が起きないことを保証し、さらに貴重な資金源にもなる。買い取った国にとっては、これだけの武器で無辜の血が流されたことを見える化できる。日本政府がやればいいのに。著者もいま最も苦しんでいるというパレスチナでも有効ではないだろうか。 ハンチントンの『文明の衝突』は話題になったのでいつか読まなければと思っていたが、この著者によれば歴史性も議論の根拠も示されてないらしい。それなのに21世紀は文明の衝突の時代になるというコンセプトが軍需産業にめいっぱい利用されたらしい。ウクライナ戦争を見ていると軍需産業をなんとかしたい。武器がなければ血は流れない。単純だが、そうしたいと思う人は多いはず。 ムスリムは世界に14億人くらいいるらしい。アメリカのように無知でこの人たちをどうしようもないほど怒らせてしまったら本当に危険だ。どういう人たちなのか偏見なく理解する努力が必要だと思った。
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