商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 白水社 |
発売年月日 | 2021/09/29 |
JAN | 9784560072370 |
- 書籍
- 新書
詐欺師の楽園
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詐欺師の楽園
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商品レビュー
3.7
3件のお客様レビュー
原著は1953年、戦後間もない頃の現代ドイツ小説。絵画作品の贋作どころか、まるっきり存在しない架空の巨匠をでっち挙げた国家ぐるみの大規模詐欺をコミカルな周辺人物とともに描く。虚構と現実、嘘と真実、戯画と批判が複層的に混じり合うが、難解さはなく、楽しく読めた。 なにかと選書センス...
原著は1953年、戦後間もない頃の現代ドイツ小説。絵画作品の贋作どころか、まるっきり存在しない架空の巨匠をでっち挙げた国家ぐるみの大規模詐欺をコミカルな周辺人物とともに描く。虚構と現実、嘘と真実、戯画と批判が複層的に混じり合うが、難解さはなく、楽しく読めた。 なにかと選書センスの良い白水Uブックス。ずっとこのシリーズは「海外小説の誘惑」と題されていたと思ったのだが、何だか見慣れない「海外小説 永遠の本棚」シリーズになっていた。別シリーズなのかと思って調べてみたところ、2013年頃からシリーズ名が変更になり、もうこの名前で50冊以上刊行されている模様。最近、Uブックス読んでなかったんだなぁ…。前の名前の方が良かったけどなぁ。
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僕がいかに偽作を描き死んだ事にされた半生を物語る。 詐欺師のロベルト伯父にその妹のリュディア叔母に育てられという顛末が箴言に満ちた格調高い文章で坦々と語られ、美しい文章のために、時々眠気が襲った。 汽車の切り離しのエピソードは愉快だった。
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20世紀、ドイツ。著名人の私物を聖遺物のように集めた博物館のような屋敷で慈善パーティーに勤しむおばに育てられたアントンは、ある出来事をきっかけに絵画に目覚める。アントンが描いた裸婦画に目をつけたおばの兄のローベルトおじさんは、実は贋作づくりの天才。学生時代にルーヴル美術館のモナリ...
20世紀、ドイツ。著名人の私物を聖遺物のように集めた博物館のような屋敷で慈善パーティーに勤しむおばに育てられたアントンは、ある出来事をきっかけに絵画に目覚める。アントンが描いた裸婦画に目をつけたおばの兄のローベルトおじさんは、実は贋作づくりの天才。学生時代にルーヴル美術館のモナリザを自分の絵とすり替えたばかりか、今はバルカン半島の小国プロチェゴヴィーナの〈国民的画家〉マズュルカを無から生み出し、まんまと文化省大臣に収まっているのだった。「ホンモノらしさ」を笑い飛ばし、美術の権威をしゃれのめす、洒脱で軽妙な喜劇。 佐藤亜紀が帯文を書くのも納得の皮肉が効いたコミックノベル。アントンのそれ自体回顧録のパロディじみて回りくどい、それでいてすっとぼけた語りが魅力で、彼の口を通して語られるローベルトのトントン拍子な出世譚は痛快だ。 アントンはプロチェゴヴィーナと隣国とのいざこざに巻き込まれ、対外的には死んだことになってしまうのだが、ローベルトはその死すら上手に利用する。現代人が芸術家に求めるのはストーリーであり、作品の良し悪しなんて誰にもわからない、というテーマは去年読んだハイスミスの『贋作』と同じなのに、シリアスさが180度違っていて笑ってしまう。 ガラクタのような〈聖遺物〉をガラスケースに飾り、自宅をさながら私設博物館のように仕立てている慈善家のリュディアと、自分で描いた贋作とすり替えて盗みだしたホンモノを飾る趣味の良い詐欺師のローベルト。種村季弘が史実上の詐欺師たちを紹介した同名ノンフィクション『詐欺師の楽園』に載っていてもおかしくないようなこの兄妹が面白すぎ、アントンよりおじさんたちに肩入れして読んでしまった。ロスコルの復讐劇におじさんが一矢報いることなく、老いを理由に負けてしまうのが悔しい。でもこのあっさりとした読み味がいいのだろう。アントンもロスコルも〈楽園〉の詐欺師のひとりであり、このお話は勧善懲悪ではないのだ。 プロチェゴヴィーナは架空の国だが、その在処として設定されたバルカン半島の歴史を紐解けばわかるとおり、〈国〉もその時々で大きく定義が揺らぐもの。贋作というテーマにふさわしい舞台を用意するために無い国を創り上げたヒルデスハイマーもまた、ローベルトおじさんの仲間なのだろう。
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