商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | ミネルヴァ書房 |
発売年月日 | 2021/09/20 |
JAN | 9784623090754 |
- 書籍
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思想をよむ、人をよむ、時代をよむ。
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思想をよむ、人をよむ、時代をよむ。
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東アジアの書の作品を読み解き、思想や時代を語る書籍である。「書は、東アジア史上の表現の中央に位置し続けている」(1頁) 文字の本質は記号である。誰が書いても同じ文字という普遍性がなければ成り立たない。コンピュータの世界は記号としての性格を突きつめており、文字は二進数の符号に置き...
東アジアの書の作品を読み解き、思想や時代を語る書籍である。「書は、東アジア史上の表現の中央に位置し続けている」(1頁) 文字の本質は記号である。誰が書いても同じ文字という普遍性がなければ成り立たない。コンピュータの世界は記号としての性格を突きつめており、文字は二進数の符号に置き換えられる。これに対して書は個性がある。 この書の属人性が顕著なものは墨蹟である。「「墨蹟」とは中国では書蹟(跡)つまり書と同じ意味で使われたが、日本では、僧侶の書、中でも禅僧の書、厳密には臨済宗僧侶の書を指すという特異な意味合いをもっている」(213頁)。 この墨蹟では人との関係性が重視される。禅宗では仏像や仏画の代わりに自ら師とする人の書蹟を拝している。茶の湯でも掛け軸に墨蹟が使われるが、村田珠光が大徳寺の一休宗純に参禅し、印可の証明(悟りの証し)として授けられた墨蹟を、茶席に掛けたことが由来である。 本書は書の解説だけでなく、辛辣な現代社会評論も多い。マイナンバーへの違和感は腑に落ちた(93頁)。マイホームやマイ箸などマイは自分のものという意味がある。しかし、マイナンバーは国家が個人を管理する番号である。システムエンジニアの立場ならば主キーを作ることの必要性は理解できる。しかし、それをマイナンバーと称することは行政の欺瞞である。 書という東アジア文化に立脚している割に本書は東アジアの政治には辛辣である。 「民が主人公であるという思想を欠く東アジアの政治家や知識人」(95頁) 「民主制が根づかず、役所を「お上」と口にしてはばからず、「天下り」が横行し、税は給料「天引き」の東アジア」(114頁) 「天子と国家を上位に戴く東アジア的な思考が払拭されない限り、民主主義なんて遠い夢、夢のまた夢」(131頁) しかし、これらは特殊日本的現象だろう。東アジアと普遍化することは韓国や中国に失礼ではないか。 本書は夏目漱石の則天去私を評価する(95頁)。天を公の原点とし、私(自分)を棄てる。本書は政治家や知識人に自らを律することを求める文脈で評価している。しかし、権力が人々に滅私奉公を強要する論理としても使われる弊害の方が大きいのではないか。日本は権力側が滅私奉公、反権力側が「一人は皆のために」と、どちらも集団主義に陥りがちである。個人主義をベースにする思想が必要だろう。 本書は消費税を批判する。私は消費者であり、消費税は不快である。一方で消費税は消費を抑制する税金であり、無駄な消費を減らす上で有益な制度と考える面もあった。本書も「浪産浪費の「右肩上がり」は人類にとっても自然にとっても不幸な出来事である」と指摘する(125頁)。現実に消費税は消費者以上に事業者が強く反対しており、消費者が最も被害を受ける制度とは言えない。しかし、「消費税は国にとって無から有を生ずる夢の錬金術、いわば不労所得である」(96頁)との指摘は消費税反対に傾けさせる力がある。消費税は貧困に苦しむ消費者からも税金を取る。公務員の利権になる。 漢字文化を重視する人々は中華人民共和国の簡体字を文化破壊・伝統破壊と否定的に評価する傾向がある。これに対して本書は簡体字が草書体をベースにしていると指摘する。「簡体字を「おかしな漢字」と決めつけることはできない。むしろ中国では、草書体が日常的にいかに広く根付いていたかに思いをはせるべきなのだ」(159頁)。 私は大学の第二外国語で簡体字に出会った。中国語を話すには至らないが、自分のメモで書や機などの漢字を書く際は簡体字を使うことが多い。その方が書きやすいためである。草書体ベースとの指摘は成程である。
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