商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | みすず書房 |
発売年月日 | 2021/08/04 |
JAN | 9784622090328 |
- 書籍
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壊れた魂
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壊れた魂
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商品レビュー
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1938年秋。スパイ嫌疑で唯一の肉親である父を失った少年、礼は兵隊に破壊された父のヴァイオリンを携えて養父母とフランスへ渡る。60年後、弦楽器職人となった礼は新進ヴァイオリニストみどりを通じ、逮捕に踏み込んだ隊で唯一父を救おうとした「クロカミ」中尉の戦後と死までの人生を知る…父の...
1938年秋。スパイ嫌疑で唯一の肉親である父を失った少年、礼は兵隊に破壊された父のヴァイオリンを携えて養父母とフランスへ渡る。60年後、弦楽器職人となった礼は新進ヴァイオリニストみどりを通じ、逮捕に踏み込んだ隊で唯一父を救おうとした「クロカミ」中尉の戦後と死までの人生を知る…父の遺した楽器を甦らせようとする礼を主人公に織りなされる、破壊と再生の物語。
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存在を知って、これは読まねば!と直感的に思った一冊です。小説部門で、これ程までの傑作は久しぶりです。芸術の域に達している、文章も筋も美しく完成された一冊でした。 アキラ・ミズバヤシさんが、フランス語で書き、それを自ら日本語に訳しているという珍しさも興味をひきます。 日本で戦...
存在を知って、これは読まねば!と直感的に思った一冊です。小説部門で、これ程までの傑作は久しぶりです。芸術の域に達している、文章も筋も美しく完成された一冊でした。 アキラ・ミズバヤシさんが、フランス語で書き、それを自ら日本語に訳しているという珍しさも興味をひきます。 日本で戦時中、厳しい思想統制がされる中、中国人の友人とシューベルトの弦楽四重奏の練習をしていた主人公の父親が、軍人に、敵国人と仲良くしている非国民と罵られ、大切なヴァイオリンを足で踏みつけられ大破させられることから物語は始まります。 シューベルトの音楽は天国的な美しさと、崇高な孤独感、善も悪も包み込んでくれる優しさが感じられ、一番好きな作曲家です。 そのシューベルトや、ベートーヴェン、さらにはベルクの音楽が出てきて、ずっと読んでいる間、美しさや苦しさを含んだ音が鳴り続けているようでした。 綺麗で深みも悲しみもある音楽や文学を、慈しみながら愛聴、愛読することで養われる確固たる倫理観や思想が、愚かにも争いに走ってしまう人間世界にいかに必要なものか、この一冊を読むと改めて知らされます。
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日本人がフランス語で書いた小説で、本人による日本語訳となった本。 クラシックの弦楽曲の底に流れる各弦の主張と調和という概念が個人の市民権という概念と響きあう。 軍国主義下の日本で弦楽曲も他のクラシックの曲と同様に敵性の曲として蔑まされ、そして主人公の父親(趣味でバイオリンを弾く人)はこの世から姿を消す。 フランス人に養子として育てられた、主人公レイは弦楽器職人となり、弦楽器の弓をつくる職人とパートナーと暮らしている。そこに父親と短い時間交流した軍人の孫娘がバイオリニストとして現れる。 世代を超えて交錯する魂。壊れたの楽器(魂)であったが、さらにその奥にあった魂は受け継がれ、国境を越え、世界中に響き渡るのであった。 作品にとりあげられる弦楽曲聴きたくなる素晴らしい本でした。
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