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戦争と軍隊の政治社会史
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戦争と軍隊の政治社会史

吉田裕(著者)

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戦争と軍隊の政治社会史

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 大月書店
発売年月日 2021/07/27
JAN 9784272521173

戦争と軍隊の政治社会史

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2022/02/06

本書は吉田裕氏が編集した論文集である。吉田裕氏は、2020年3月末に一橋大学退職を機に、その教えを受けたゼミ生が、吉田裕氏のこれまでの研究してきた「戦争と軍隊の政治社会史」の視点から、最新の研究成果を持ち寄り、退職を祝うために編さんされた。吉田裕氏は、著書「日本軍兵士―アジア・太...

本書は吉田裕氏が編集した論文集である。吉田裕氏は、2020年3月末に一橋大学退職を機に、その教えを受けたゼミ生が、吉田裕氏のこれまでの研究してきた「戦争と軍隊の政治社会史」の視点から、最新の研究成果を持ち寄り、退職を祝うために編さんされた。吉田裕氏は、著書「日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実(中公新書)で、2019年新書大賞を受賞。2019年11月号のいつでも元気の巻頭エッセイで吉田裕氏は、長年にわたって集めた書籍や資料が、大学退官を機に行き場がないことを嘆いておられる。しかし、その膨大な資料こそ歴史を正確に検証する重要書類であり、政府のご都合主義による「歴史戦」などといって「歴史修正主義」を当然視することに対する、厳しいアンチテーゼを持つのも吉田裕氏であると私は信じている。  3部12章から構成される論文集は興味深い内容が凝縮されている。 第1章第3部「日本兵達の『慰安所』-回想録に見る現場(平井和子)」では、日本、朝鮮、中国などの女性慰安婦問題を指摘しつつ、一方で「兵士への性暴力」を検証している。「強いられる『女役』初年兵への性暴力」として、大和乗組員になった兵士の回想では、「はっきりいいますとね、大股スマタ、尻、肛門、尺八、手の4つのうちどれかで『女』をつとめさせられるのですが、こっちはいやですよね。だけど断ると制裁が怖いから、しかたなく承知する」との証言録がある。また、別の兵士は、「変態性の」一、二の上官に「色白で美男子の初年兵」が「慰安婦代役」を務めさせられたと言う。「数日後から痔からの出血、体力消耗で入院する羽目になった悲運の男もいた」とし、「これも上官の命令には絶対服従しなければならない私的制裁にも劣らぬ野蛮な行為である」と記している。性行為を上官から強要された寡黙な初年兵にとって、これは性暴力であろうと断罪する。 第1部第4章「新中国で戦犯となった日本人の加害認識(張宏波)」では、帰国後医師教育を受け直し民主診療所の内科医師を続けるかたわら、中帰連の中心者として平和活動を重ねた湯浅謙医師が紹介されている。特に、生体解剖の経験を語る数少ない医師として、市民を相手に600回以上の講演を重ねた。語られる罪行の残虐さだけでなく、その語り口も戦後世代に強い印象を残すものとして、戦争に染まってしまうことの恐ろしさを伝えようとしていた。  巻末の吉田裕氏のまとめでは、戦後の日本社会においては、戦争や軍事組織を全面的に否定する平和主義が強固に存在していたため、ミリタリーカルチャーは、現実社会での軍事・安全保障問題とは切り離された映画・漫画・アニメ等などの「ミリタリー関連趣味」の領域で形成された。ミリタリーカルチャーは、社会の中心部ではなく周縁部分形成されたのである。しかし、同時にそのことは「平和・安全保障をめぐる議論の場で、戦争・軍事のリアリティーがしばしば隠蔽・忌避されるという逆説をもたらした」と指摘する。戦争や戦場のリアルな現実を視野に入れ社会のなかの軍隊の存在を問い直すことによって、日本人の平和意識をより確かなものにしたいという思いが伝わってくる。軍事研究史が大きく立ち後れた日本の現実を考えるならば、答えは簡単ではない。自分なりの回答を模索したいとして、退官したとはいえ、吉田裕氏の研究は続くのである。

Posted by ブクログ

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