商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 書肆侃侃房 |
発売年月日 | 2021/06/28 |
JAN | 9784863854659 |
- 書籍
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O脚の膝
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O脚の膝
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『おむかひのゆうくんのわらふこゑ/なんてぴすとるのにあふまひるでせうか』―『O脚の膝』 昔、茂吉の歌集を読もうと思い立ったことがある。歌人の息子、マンボウ先生の本にはまっていた頃のこと。しかし旧仮名遣いで古語も多く、防人の歌のような詩情の歌も多いので、歳も百は違わないというのに...
『おむかひのゆうくんのわらふこゑ/なんてぴすとるのにあふまひるでせうか』―『O脚の膝』 昔、茂吉の歌集を読もうと思い立ったことがある。歌人の息子、マンボウ先生の本にはまっていた頃のこと。しかし旧仮名遣いで古語も多く、防人の歌のような詩情の歌も多いので、歳も百は違わないというのに、むしろ千年以上昔の万葉集の歌を読んでいるような気がして、赤い岩波新書が中々進まなかった覚えがある。茂吉の歌に限らず、晶子の歌も生々しさは鮮明に伝わるとは言え、短歌と言えば古語という刷り込みがあったから、俵万智の「サラダ記念日」の新しさは衝撃的だった。何しろ分かり易い。そんな缶チューハイで大人の恋愛を詠んだ(でしまった、という方が適切か)俵万智だが、その歌人が毛嫌い(あるいは嫉妬)していたのが同学年の林あまりで(確かそんなエッセイを書いていたのを読んだ記憶がある)、平たく言えば林あまりの歌に宿るあざとさに対する拒否感があったのではないかなと想像している(因みに自分も同学年。この話とは全く関係ないけれど)。今なら、あざとくて何が悪いの、と言うところだろうけど、例えばこんな歌が俵万智のお気に召さなかったのだろう。「生理中のFUCKは熱し/血の海をふたりつくづく眺めてしまう」。今橋愛の歌集を読んでそんな林あまりのことを思い出した。 『すうっとするためだけになめたあめだまのように生きていきそう/こわいよ。』―『O脚の膝』 決して仮名にひらいた歌ばかりではないのだけれど、暗号めいた、ひらがなばかりの文字列にこの歌人の良さはあるように思う。時にわかり易く、だが音律にこだわらず、女性の哀しみや人間関係の悲喜を言葉に託すような歌もあるが、瞬間的な情景に満ちる抒情を、想像することの余韻を持たせたまま、柔らかな文字列に載せている歌が圧倒的によい。本の帯に採られた幾つかの歌は正にそんな歌だ。その中の一首と対を為すこんな歌もまた。 『ゆれているうすむらさきがこんなにもすべてのことをゆるしてくれる』―『O脚の膝』 ちょっとだけ、笹井宏之の「えーえんとくちから」を思い出すね(詩情は全く違うけれど)。 自分も一時短歌にはまっていた時もあるのだけれど、詠ってみて思うのは、短歌には心情が乗り移り過ぎる、あるいは載せやす過ぎるということ。たった三十一文字だけれど、使える言葉が多過ぎる(詠んでいた時はそうは思っていなかったけれど。でも、何かの媒体で俵万智が俳句を読むという企画に応じていた時、詠んだ句を指南役の俳人が「説明的過ぎるね」「下の句が聞こえてきそう」と評していた意味が最近は分かるような気もしている)。俳句が写真ならば、短歌はどうしても映画になる(個人的には川上弘美の「はつきりしないひとね茄子投げるわよ」のような句も好きだけれども)。文字数の余裕が、物語を載せ過ぎてしまう余地を与えてしまいがちになる、とでも言ったらよいのか。あとがきで歌人が自身の過去の歌を読み直して「若いなあ」と述べた感想の根本には、その言葉による(説明的な、あるいは意図的な)動きの過多があるのだと思う。強い言葉の余韻もよいけれど、余韻が響き過ぎない程度に漂う歌は、音に変換された後に読み手の思考の中に言葉が自然と溶解してゆく。しかし過ぎた歌は言葉が溶け切らずに残る。違和が残りいつまでも反響し続ける。その反響があざとさとなる。だが叙情を直接言葉にするのではなく情景描写に託した時、短歌もまた俳句のような心の働き方を発動する。そんな歌を幾つか見つけた。 『おいてかれないようにあるく/スクンビットソイ33/レンゲがおちてる』―『星か花を/スクンビットソイ33』 言葉が勝手に思考を動かす。幾晩も過ごしたタイの風景とともに。ああ、その道端に落ちているレンゲは、花のことなのか、それとも白く安っぽいブラスチック製のレンゲのことなのか。確かにスクンビットの33番通り(ソイ)には飲食店も多いし、道端には芥と一緒に人々の飲食の痕跡も残され散乱してもいるけれど。ああ、この人もソイカーボイへ行ったのだな。そして、シンハービールは確かに、甘い。
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そこにいるときすこしさみしそうなとき めをつむる。あまい。そこにいたとき 濃い。これはなんなんアボガド? しらないものこわいといつもいうのに きのう家。 軽くこわれて かあさんは こんな日にだけ むらさきのしゃどうを まいちゃんのたてぶえなめたさかいくん 谷町線...
そこにいるときすこしさみしそうなとき めをつむる。あまい。そこにいたとき 濃い。これはなんなんアボガド? しらないものこわいといつもいうのに きのう家。 軽くこわれて かあさんは こんな日にだけ むらさきのしゃどうを まいちゃんのたてぶえなめたさかいくん 谷町線でぐうぐうねてた 「水菜買いにきた」 三時間高速を飛ばしてこのへやに みずな かいに。 たくさんのおんなのひとがいるなかで わたしをみつけてくれてありがとう . ひらがなの簡易的な口語と、スペース、改行を巧みに使って絶妙なリズムを作ることで、ふつうにストンと縦に詠む以上の感情的な効果を生み出してる。 余白や、言葉のあいだや後ろを使うのがうまい
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