ジョージ・クルックシャンク ヴィクトリア朝を描いた風刺画家

清水一嘉(著者)

• 販売会社／発売会社: 彩流社
• 発売年月日: 2020/12/25
• JAN: 9784779127304

商品レビュー

2021/06/08

英国ヴィクトリア時代の風刺画家、クルックシャンクの生涯。
第I部　ジョージ・クルックシャンク
　　　　-ヴィクトリア朝の愛すべき挿絵画家
　第一章　風刺版画(カリカチュア)の時代-若きクルックシャンク
　第二章　挿絵画家の時代-クルックシャンクとウィリアム・ホーン
　第三章　クルックシャンク最後の時代
　　　　　　-クルックシャンクと禁酒運動
第II部　クルックシャンクのロンドン
カバー等はカラーだが、文中の画像はモノクロ。参考文献有り。
特異な人物描写とカリカチュアでの版画家であり、
ディケンズの挿絵画家としても名を成した、
クルックシャンクの生涯を描いた、評伝です。
12歳で風刺画家の父の手伝いを始め、父の不慮の死後は、
兄と共に風刺画家の道へ。若干18歳で政治風刺で頭角を現し、
版画出版者のホーンと手を組み、数々の風刺画を描いて、
一世風靡しました。その対象は、貴賤を問わない人物でしたが、
特にナポレオンとジョージ四世への作品は凄まじい描写です。
その後、挿絵画家に転身。
グリム童話の最初の英訳本「ドイツ民話集」や子供向けの作品、
古典作品、同時代の作品、特にディケンズ作品でその個性を
発揮しました。また自らの作品の出版にも進出します。
そして晩年、禁酒運動にのめり込み、その性格もあっての不遇。
名声以上の85年という長寿で、生涯を終えました。
第II部は、クルックシャンクが描いた、当時のロンドンの
下層民の労働と生活を紹介しています。
かつてディケンズ作品を集中して読んでいた頃に、
彼の作品の挿絵画家としてのクルックシャンクを知りました。
が、彼に関しての情報は断片的だったので、この評伝は嬉しい。
売れっ子だった彼の、晩年を詳しく知ることが出来ましたし、
エッチングや木版画等の技法の変化についても、わかりました。
ただ、残念なのは･･･難しいとは思いますが、作品一覧と年表が
無かったこと。画像が小さくモノクロだったこと。
これは是非とも彼の画集が出てほしいものです。
実際、展覧会の図録だけしか無いのは寂し過ぎですよ～。