座右の世阿弥 不安の時代を生き切る29の教え 光文社新書

齋藤孝(著者)

• 販売会社／発売会社: 光文社
• 発売年月日: 2020/06/16
• JAN: 9784334044770

商品レビュー

2021/11/13

『座右の世阿弥』
巧いというのは、よく似せているとか、上手に演じているとか、そこに演者の作為がまだ見えているということ。本当に素晴らしくなるともはや演技の巧さというようなものも関係ない。ただそこに存在している状態が素晴らしい。

2021/09/19

齋藤氏の「座右」シリーズ第四弾は、世阿弥
です。

室町時代に能を日本の演芸の一つに昇華させ
た功績を持つ、今なら一流プロデューサー兼
役者と言ったところです。

当時は様々な演芸が将軍家から援助を受けよ
うと芸を競い合っていました。

それゆえ次の世代に対して「秘伝」を残した
とされるのが「風姿花伝」「花鏡」などの書
です。

現代では誰もが読むことができますが、本来
は門外不出であり、明治の後半までその存在
も定かではなかったそうです。

そんな一子相伝とも言える世阿弥の言葉は、
現代の我々にも刺さります。

佐渡へ島流しの憂き目にあうなど、決して順
風満帆ではなかった世阿弥のメンタルの強さ
こそ、現代人が学ぶべきタフさの一冊です。

2021/05/10

世阿弥の『風姿花伝』をはじめとする芸能論のなかから印象的なことばを紹介し、現代の読者にとってわかりやすい例を引きながら、そこに示されている教訓を解説している本です。

世阿弥には「離見の見」といった印象的なことばがあり、ビジネス書などでアクセントとして引用されることがしばしばありますが、本書の解説もそうした世阿弥の「利用法」を語っているように感じられます。さかなクンがサックスを演奏する例や、村西とおるの話術についての例などを巧みに織り交ぜつつわかりやすく解説しているところに著者の才能が示されていることはまちがいないと思いますし、またそれらの例が世阿弥の「思想」とまったく無関係であるとも思いませんが、それ以上に深く世阿弥のことばに入り込んでいくことはありません。

もっとも、これは本書の欠点というよりも、そうした制限を設けることで世阿弥のことばをわかりやすく解説するのが著者の意図だということは、いちおう理解しているのですが。