世迷い蝶次 むじな屋語蔵 祥伝社文庫

三好昌子(著者)

• 販売会社／発売会社: 祥伝社
• 発売年月日: 2020/06/12
• JAN: 9784396346409

商品レビュー

2024/08/15

人の秘密を質種にとるという不思議な質屋の話。
このような人ではなく、かつ高名な妖でもない存在はやっぱり江戸ではなく京都がよく似合います。
単純な人情ものではなく優しさと厳しさが同居している内容と、美しい情景描写がマッチして何とも情感のある趣きでした。一作で終わるのが勿体無いと思うのですが、三好さんはシリーズものは滅多に書かないので、これが読み納めになるのかな。。。

2022/06/24

三好昌子氏の妖系（勝手に妖系なるジャンル分けをしてる）の3冊目である。コレまでも、良質な時代物の妖系を堪能させてもらったが、これはまた秀逸と言えるのではなかろうか？
無尽無屋のお理久が主人公でも蝶次が主人公でもどちらでも連続物を期待させる物語りなのに、次は無いのだろうか？
妖の話しであり、ミステリーであり、ドキュメンタリーであり、が上手くミックスされていて、この先をまだ読みたくなる作品だ。

2022/05/18

初めて読む作者　三好昌子氏の本である。
時代小説がすきで、色んな本を読んでいるのだが、江戸を舞台に描かれている者が多い。
その中で、これは京都！
近畿在住の私には、その土地柄がわかり易い。
そして、この著者のなんとも言えない情緒豊かな風情の表現が、すんなりと頭に入って来る。

話しは、いまは同心の手先になっているのだが、呉服商の須磨屋のお妾の子である蝶次が、主人公である。
本当だったら、その呉服商の跡取りになっていたのに、女の子が、生まれて、その子が養子を迎えて跡を取ることに・・・・
しかし、それは、陰謀が、あっての事だった。
蝶次は、そんな中、自分の生い立ちをひょんなことから、知ることになっていく。

第2の主人公ともいえる謎の女、お理久。
訳の分からない品の引き取りで、質屋　「むじな屋」を営むのだが・・・・

人生、知りたくなかった事、忘れたい事、辛かった事、胸に仕舞っておくことが、とてもつらいという十字架を背負っていく秘密を、誰かにうち開けたい。
その想いを、叶えるあやかしの世界があったなら・・・

秘密の記憶を預かるという　想像できないような話なのだが、・・・今までの安倍晴明のような者でもなく、妖のような妖怪が、出て来るわけではないのだが、・・・・このような蝶次が、お理久に良いように、使用人の如く扱われて行く事に、少し、違和感もある。

僧侶のように、秘密をかかえても、其のまま、自分の非を悔いながら、生きて行く勇気も必要かと思いながら、自分の出生に疑いを持ちながら、蝶次は、これからどのように人生を歩むのだろうと、読み終えながら、本を閉じた。