ヨーロッパとイスラーム世界 ちくま学芸文庫

R.W.サザン(著者), 鈴木利章(訳者)

• 販売会社／発売会社: 筑摩書房
• 発売年月日: 2020/01/09
• JAN: 9784480099563

商品レビュー

2020/05/27

イスラームが勃興しヨーロッパと接触して以降、当時はヨーロッパに比し経済、文化の先進地帯であったイスラームを、ヨーロッパがどのように見てきたか、見ようとしてきたかを、講義したもの。
十字軍時代の接触が生産的な理解を何ら生み出さなかったこと、コーランのラテン語翻訳の背景や意味などについて、平易な語り口ではあるが、深い洞察に満ちた内容が語られている。
文明の衝突や世界の分断化が言われている今だからこそ、碩学の文章に触れてもらいたい。

2020/01/31

ヨーロッパ世界でどのようにイスラーム観が変化したかを7世紀から15世紀頃まで追って解説してある。面白かった。凝縮され簡潔な論点、柔らかい語り口の分かりやすさもあるが、何より作者が楽しんで語っているのが伝わってくるのでこちらも楽しくなってしまう。
元々古い本ではあるけれど、「ひとことでいいますと、中世の学者や実務に携わっている人びとは、時代的な背景はちがっておりますが、何から何まで現在のわたくしたちにもなじみの問題に立ち向かっていたのです。」とはじめにサザンが述べているのは現代の私たちにも通じる言葉だ。
この本を今復刊するという意図もはっきり伝わってくる。もちろんそっくりそのまま通用する解決策が書いてあるということでは全くないし、その意図にも若干楽観論を感じないでもないけど。でも陥るところって、人間本当に同じようなところなんだなと思って何とも言えない気持ち。