商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 小学館 |
発売年月日 | 2019/09/12 |
JAN | 9784093523752 |
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記念碑
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「戦後10年」のタイミングで発表された「8月15日もの」小説の問題作。 物語は日本列島空襲が始まった1944年12月から、米軍占領が始まる1945年9月までの時間をカバーする。語りは元外交官の妻で、いまは「和平派」の枢密顧問官・深田の私設秘書として活動する石射康子と、米国帰り...
「戦後10年」のタイミングで発表された「8月15日もの」小説の問題作。 物語は日本列島空襲が始まった1944年12月から、米軍占領が始まる1945年9月までの時間をカバーする。語りは元外交官の妻で、いまは「和平派」の枢密顧問官・深田の私設秘書として活動する石射康子と、米国帰りのジャーナリストで、深田ら「和平派」高官のための情報収集を行っている伊沢信彦、その二人を足がかりに「和平派」の高官を検挙しようと付け狙う特高の井田一作を中心に展開する。日本敗戦の時間を辿り直すという意味では石川達三の『風にそよぐ葦』と似ているが、石川の小説のような、「良心的知識人」の自己正当化・自己合理化は見られない。 むしろ、従来の歴史研究では必ずしも重視されてこなかった戦時末期の人心荒廃が、論理的に、詳細に描き込まれていることが重要。例えば堀田は、『記念碑』連載にあたってのエッセイで、特攻隊を「特殊部落出身者」だとする流言蜚語を見つけて「人の心の酷さ」を感じた、と述べていた。空襲下の人々の自己中心性、戦争に参加しているから何をしても許されるのだ、という頽廃がくり返し描かれる他、「和平派」の政治家たちの視野の狭さと、階級的な利益にしか関心のないありようも剔抉されている(敗戦に際して、徳川幕府系の華族が公然と公家と薩長閥のせいで戦争に敗けた、と語り合うシーンには奇妙なリアリティがあった)。 記述として目をつけていくところもさすがと感じる。特攻隊員になったものの、機の故障で二度引き返したことを咎められた康子の息子が1945年8月の厚木航空隊にいたと設定することで、「8月15日」以降の「抵抗」について(少しではあるが)言及したり、ハワイから放送されていた日本人捕虜による戦争終結の呼びかけを登場人物に利かせていたり、ブーゲンビルで置き去りにされた康子の兄の手記を小説の最後に引用して、死者の声をテクスト全体に響かせていたり――。もっと早く読んでおくべきだった作品だったと悔やまれる。しかし、ここまで透徹した目を持っていた堀田も、植民地出身者=朝鮮人・台湾人への目配りが欠けているように思われる。
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