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モレ村の子どもたち
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モレ村の子どもたち

黄晳暎(著者), 波多野淑子(訳者), キム・セヒョン

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モレ村の子どもたち

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 新幹社
発売年月日 2019/06/01
JAN 9784884001247

モレ村の子どもたち

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2019/08/04

戦争が大きく影を落とす市民生活を描いた文学作品は多く存在するけども、そのほとんどは大人の視点で(あるいは大人を主人公として)描かれたもの。 ここでふと気が付く。「子どもの視点で戦争を描いた作品はあったっけ?」 日本では幸運にも「火垂るの墓」がある。では朝鮮半島ではどうか? この...

戦争が大きく影を落とす市民生活を描いた文学作品は多く存在するけども、そのほとんどは大人の視点で(あるいは大人を主人公として)描かれたもの。 ここでふと気が付く。「子どもの視点で戦争を描いた作品はあったっけ?」 日本では幸運にも「火垂るの墓」がある。では朝鮮半島ではどうか? この本は短編10編から成り、全編がスナミという男の子が主人公の物語で、彼が小学校入学直前に朝鮮戦争が勃発し、自分も家族も周りの大人も常識というものを簡単に踏みにじる戦争というものに有無を言わさず巻き込まれながら、それでも力強くしたたかに生きる様子が描かれている。 この本では、戦争の影が付きまとうという点では火垂るの墓と共通しているが、少年がいかに朝鮮戦争の影が忍び寄る日常でも自分らしく生きるかということが底流にあり、生命を脅かすまでの戦争の切迫感は火垂るの墓ほど深刻ではない。 とは言え作者の少年時代における朝鮮戦争体験が下敷きにされ、平時からは想像できない不条理さで人々の内面が無意識に侵食されていくさまなどの「リアルさ」は決して失われていない。 スナミの家族について見ると、父は解放(=日本の敗戦)後、定職を得られずに各地をさすらっているため、スナミは働く母と2人の姉と、母子家庭同様の状態で生活している。 つまりスナミ一家の日常では男は彼1人。そういう事情を背景に、少年スナミの自我形成が物語の中心になっている。 私が特に魅かれたのは、理由なく理不尽な混乱に巻き込まれて失ったものがある人間に対して、少年たちが真実を見つけ出し、態度を変化させていく描写。 ある傷痍軍人がいて、少年たちに会うと敬礼のしかたを教えようとするが、「よしっ」という威厳のある決め言葉も「よしゅっ」と舌足らずなので少年たちは心の中では笑っていた。 しかしある日、子どもと老人が誤って電線に絡まり身動きできないという場面に少年たちと傷痍軍人が遭遇する。誰もが助けるのに二の足を踏むなか、傷痍軍人は飛び出し、感電し血だらけになりながらも救出に成功する。少年たちはそれ以降、傷痍軍人に道で会うと“本物の軍人”と同様に敬礼するようになった。 軍人にあこがれる一方で、見た目に劣る“元”軍人へは手のひらを返した態度を取るのも、少年の残酷な一面としてありえる話だ。しかしスナミたちは、卑下していた傷痍軍人があえて包み隠していた真実を、不器用ながらも自分たちの力で見つけ出し、それに見合った尊敬をもって接するように変化する。 周りの大人たちは少年たちが真面目な顔で傷痍軍人に敬礼しているのを見たら笑うだろうが、真実を知った少年たちにはそのような周囲の笑いは意味がない。 そういう小さな体験の一つ一つの積み上げによって、戦争で傷ついた者を見た目だけで笑うような態度から、少年たちは脱皮できたのだ。 そのように、朝鮮戦争がテーマの主軸であるものの、朝鮮戦争についてよく知らなくても、少年時代のなんとも言えない甘酸っぱい思い出が編み込まれた短編としての味わい方があると思う。 私自身も、朝鮮戦争といえばあしたのジョーの金竜飛しか思い浮かばない貧弱な知識で偉そうなことは言えないなかで読みました(泣)

Posted by ブクログ

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