復元船サン・ファン・バウティスタ号大図鑑 1990-2021

公益財団法人慶長遣欧使節船協会

• 販売会社／発売会社: 河北新報出版センター
• 発売年月日: 2019/04/10
• JAN: 9784873413846

商品レビュー

2020/01/11

書名の西暦表示には意味がある。1990年に復元船プロジェクトに着手、慶長使節出帆380年に当たる1992年に起工、1993年5月に進水式、同10月に竣工式を経て一般公開、2011年3月の東日本大震災の津波でダメージを受けてミュージアムが休館、出帆400年記念の2013年11月に再開されるが復元船の老朽化で乗船見学が中止となり、その後2021年以降の解体と後継船によるリニューアルの方針が出された。
本年2月の石巻のローカル紙報道によれば、リニューアルは原寸大（整備費約11億7500万円）と1/4スケールの繊維強化プラスチック（ＦＲＰ）で復元（同４億５千万円）の２案が検討され、1/4スケール案でまとまったとのことだ。また、宮城県は年内に後継策の基本計画を策定するとしている。
我が国ではこの復元船のような本格的な木造船は再び建造ができない現実がある中で、本書は原寸大の復元船が歴史のひだに埋もれてゆくことがないように出版された。
ウッディジョーがキットを開発して販売しており、当会の例会でも当社の開発者より数多くの写真を使いながら講演をいただいているが、本書にも豊富な写真や図面が盛り込まれている。全部で9章の構成になっている。復元船に関連する事項をコンパクトに理解できる構成となっているが、モデラーの視点からは以下の３章が参考になるだろう。
第二章　復元船サン・ファン・バウティスタ号図面
第三章　同建造ドキュメント
第四章　同内部

本書の帯には、『歴史的・文化的価値』を最重要と考え、次の４つの約束が厳しく守られた。
１. 木造船とする。
２. 原則として原寸とする。
３. 石巻地域の造船所で建造する。
４. 宮城県内の船大工を中心に建造する。
とある。当時の意気込みと勢いをひしひしと感じさせるものだが、復元船は30年の命であった。残念の一言である。