商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 有斐閣 |
発売年月日 | 2018/12/20 |
JAN | 9784641149274 |
- 書籍
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維新支持の分析
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維新支持の分析
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サーベイ実験など実証的手法によって大阪での維新支持を分析する。床屋政談が悪いとも言わないが、議論の土台を提供できるようなデータを揃えるのは大事だし、特に日本においてはこれまで欠けがちなことのようだ。 しかし、こういったサーベイ実験は例えばバイオで言うところのin vitroみた...
サーベイ実験など実証的手法によって大阪での維新支持を分析する。床屋政談が悪いとも言わないが、議論の土台を提供できるようなデータを揃えるのは大事だし、特に日本においてはこれまで欠けがちなことのようだ。 しかし、こういったサーベイ実験は例えばバイオで言うところのin vitroみたいなものではと思う。本当に実世界と同じような実験条件が設定できているのか、特に政治みたいにデリケートな代物を扱うときはふつうの心理学以上にむずかしそう。 第4章の維新支持規定要因の分析から、筆者は維新が「大阪」の代表者だから支持されていると読み解く。しかし違った角度から見れば、政策の違いは議員定数削減を除けばほとんど支持要因になっておらず、橋下徹への支持がもっとも重要な要因となっている、とも読める。これをポピュリスト的支持とラベリングするかどうかは措くとして「これでいいのか?」との思いは強く残る。 たとえば米国でポピュリストと呼ばれる政治家の代表格はトランプだろうが、彼がコロナワクチンのブースターショットを受けると支持者からブーイングが上がる。やつは裏切り者だと。ある意味、ここにはまず政策(?)の選好があって、それを踏まえたうえで政治家への支持がある。ふつうのプリンシパルーエージェント関係だ。大阪で起こっていることはこれと違う個人崇拝的ななにかなのだろうか(ただし維新支持と橋下支持が必ずしも相関しないとの指摘も本書の別の分析ではなされている)。 ともあれ特別区設置の住民投票が否決された一事をもってしても、決して盲信的な支持でないことは十分に証明されているとは思うが。とにかく解釈が一筋縄では行かない。
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「なぜ維新は大阪で支持されているのか」、「なぜ(一度目の)特別区設置住民投票の結果は反対多数となったか」をサーベイ実験等で実証的に解明。 維新の台頭をポピュリズム論で説明することを批判し、有権者の合理性を主張している。 鮮やかな分析で、政治学における実験的手法の威力を感じた。流石...
「なぜ維新は大阪で支持されているのか」、「なぜ(一度目の)特別区設置住民投票の結果は反対多数となったか」をサーベイ実験等で実証的に解明。 維新の台頭をポピュリズム論で説明することを批判し、有権者の合理性を主張している。 鮮やかな分析で、政治学における実験的手法の威力を感じた。流石サントリー学芸賞受賞といえる良作と感じたが、内容に関わるような誤植(例えば、P116で、「公務員数(F5)」とあるが、F5は議員定数であり、公務員数ならF6で、どちらを指しているのかが不明確)が散見されたのは残念だった。
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大阪都構想は、大阪市を特別区に再編し、現在大阪府と大阪市が担っている広域行政を一元化するという地方自治制度の改革です。橋下徹氏が率いる大阪維新の会が主導してきましたが、2015年5月の住民投票において僅差で否決されました。結果を受け橋下氏は政界を引退しました。 その大阪都構想を巡...
大阪都構想は、大阪市を特別区に再編し、現在大阪府と大阪市が担っている広域行政を一元化するという地方自治制度の改革です。橋下徹氏が率いる大阪維新の会が主導してきましたが、2015年5月の住民投票において僅差で否決されました。結果を受け橋下氏は政界を引退しました。 その大阪都構想を巡って再び対立が激化しています。 本書は、有権者の投票行動、選好調査などを通じて、なぜ維新は大阪で強いのか(他では振るわないのか)、にもかかわらず都構想の住民投票で敗れたのはなぜか、実証的に論証した労作です。 橋下氏・維新=ポピュリズムという見方を筆者は明確に否定します。党派性とポピュリズム態度に関する調査によれば、維新支持者は、多様性を重視し、大衆意見を重視する人民主義的性格は平均より低いことが示されます。 また、別の調査で、維新が大阪で強い支持を集める理由も説明します。曰く、地方議員選挙は中選挙区で、有権者は政党でなく議員個人を選択する。結果、どの政党も大阪全体の利益代表者たりえなかったところに、維新が「大阪全体の代表」というラベリングに成功したと。よって、橋下氏個人の支持率は長期的に低下傾向だったにもかかわらず、維新は大阪で圧倒的な強さを持ち、その裏返しとして他で大きな支持を集められない。維新に投票する人たちは、大阪全体の利益代表として「合理的」に維新を選択したと説明されます。 意外なことですが、その有権者の合理性が都構想の否決につながります。 都構想の住民投票は、メリット・デメリットを含め判断材料が極めて多く与えられた点で、他の選挙と大きく異なるものでした。有権者は、都構想が大阪市の廃止を意味することをしっかり認識していました。結果、維新支持層の中で大阪市の廃止の是非を合理的に判断した結果、慎重な人たちが賛成から反対に転じたというのです。シルバー民主主義、大阪市内の南北問題など、もっともらしい見方を立証できるデータは存在せず、それらは「維新=ポピュリズム」という見方に固執した幻想にすぎないと批判します。筆者曰く、「大阪の有権者はきわめて合理的な判断をくだした」のだと。 調査→結果分析→仮設の提出と、維新支持の構造について論を進める筆者の手際は鮮やかです。見立ての部分もかなりありますが、都構想の否決、その後のダブル選挙での圧勝、国政選挙での強さを整合的に説明できる解のように思われます。 最近、橋下氏以降10年間の大阪の改革を検証した資料に触れる機会がありました。改めて全体を俯瞰すると、よくまあこれだけ多くの分野で多層的な改革が進んだものだと感心します。これまでは橋下氏個人の稀有な才能と、政治不信にあった府民の不満が推進力だと考えていましたが、大阪全体の利益を考える有権者の支持があったことが明確に示されて、腑に落ちた心持です。 来月には知事・市長ダブル選が実施されるという観測が強まっています。大阪府民・市民は今回、どのような判断を下すのでしょうか。
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