商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | みすず書房 |
発売年月日 | 2018/10/10 |
JAN | 9784622087519 |
- 書籍
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人種主義の歴史 新装版
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人種主義の歴史 新装版
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商品レビュー
4.7
3件のお客様レビュー
ありそうでなかった人種主義の歴史の概説書。 かなり頭が整理された。 ナチスの反ユダヤ主義とアメリカの黒人差別の問題が、並行して議論されるところが衝撃的だし、相当の説得力をもつ。 そして、そのより最近の展開として、南アフリカにおける人種主義についての問題についても分析してあっ...
ありそうでなかった人種主義の歴史の概説書。 かなり頭が整理された。 ナチスの反ユダヤ主義とアメリカの黒人差別の問題が、並行して議論されるところが衝撃的だし、相当の説得力をもつ。 そして、そのより最近の展開として、南アフリカにおける人種主義についての問題についても分析してあって、なるほどであった。 人種差別って、歴史的に徐々に無くなる方向で進んでいると勝手に思っていたのだが、アメリカにおいては奴隷解放以降、むしろ差別が厳しくなる方向に進んだこと(それが改善するのは、1950年代以降の公民権運動を待つ必要がある)、そして南アフリカのアパルトヘイト政策も昔からあったものではなく、それが本格化したのは、1950年代以降だったという。 人種差別にかぎらず、社会の進化の自然な方向性みたいなのには、ちょっと批判的な視点を持つことが大事だな。 最後に訳者が、この本の議論の範囲が、欧米的なもので、アジア、とくに日本の記述がないことを批判していて、訳者の日本における人種主義の歴史を論じている。 まあ、日本の問題が記載されていないのは、欧米中心主義というわけでもなく、著者がそれを論じるまでの知見をもっていないという謙虚さから来ているのではないかと思った。訳者の日本における人種主義の説明は、この本の主張を補完するうえで、とても役にたった。
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読書ニーズと若干ずれた。再読したい。 ・信徒↔︎異教徒 → 文明人↔︎未開人 ・人種の概念やそれに伴う差別・迫害は社会的ニーズによって「捏造される」
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人種差別について勉強し始めてからずっと積読してあった1冊。 比較史の先駆けでありピュリーツァー賞候補になるなど著名な著者の力作だったので、これまでの学習がないととてもチンプンカンプンだったと思うが、半年が経ちなんとか読み終えるまでには成長した。 タイトルにある通り、本書は人種主...
人種差別について勉強し始めてからずっと積読してあった1冊。 比較史の先駆けでありピュリーツァー賞候補になるなど著名な著者の力作だったので、これまでの学習がないととてもチンプンカンプンだったと思うが、半年が経ちなんとか読み終えるまでには成長した。 タイトルにある通り、本書は人種主義の歴史を辿った著作だが、これまで読んできた本とは異なり、歴史の初めを宗教との関わりの中からスタートしている。 従来の定説では人種主義の発明は近代以降のものとされてきたが、その起源を中世の宗教差別から紐解いており、入り口からとても興味深い。 人種差別は過去のものではなく現在も社会が抱える課題だが、その本質を見るためには1つ前の近代でどの様に世界的に発展してきたのか?を前提に入れねばならず、近代を考えるためには更に遡って中世において人種差別の雛形ともいえる萌芽がどの様に生まれたのか?を考慮に入れなければならない。 また、著者は人種差別という言葉の曖昧さ、広範さを避け、明確に定義づけることから始めており、それはゼノフォビアや近代における狭義の科学的人種主義でもなく、「一つのエスニック集団や歴史的な集団が別な集団を、差異が遺伝的で変えられないと信じられていることを根拠にして排除し、殲滅しようとするときに、存在するもの」(P.176)としている。 本書の中盤ではこうした定義の下で近代における人種主義の発展を考察し、またアメリカ南部・ナチス政権下・南アフリカにおけるアパルトヘイトの3つの「明示的人種主義体制」が如何に確立されていき衰退しかたかを見事に比較している。 その中では共通する特徴もあれば、各事例特有の物もあるが、「何故国家として明示的に種々主義体制をとるに至ったか」についての構成はいわゆる思想史に留まらず、当時の地政学や国際的な政治状況にも絡み、非常に示唆に富んでいて、未読の方は是非読んでもらいたい。 また、本書の中で最も印象的な文章として「西洋においては平等という前提と人種主義をイデオロギーや世界観として大きく開花させた前提条件であると思われる特定の集団に向けられた強力な偏見との間に、弁証法的な相互作用を認めることができる。」(P.12)という一文がある。 読み始め、これは非常に重要な文章だ!という直感はあったものの、なかなか理解が追いつかずモヤモヤしていたが、後半にある訳者解説でようやく紐解くことができた。 中世において、「全ての人は平等である」の枕には「神の元において」が、近代には「市民権の名の下に」が置かれたが、一方でその「全ての人」に入れない人々、中世であれば異教徒、近世では社会最下層の人々・異人種が存在していた。 自然科学の発展により宗教から科学へと移り変わる時、この構造の橋渡しをしたのが人種主義である、という著者の考察は見事という他ない。 現代に置き換えるなら「金の元に」が枕に来るのだろうか。 また、本書の優れた点として、従来では添書き程度の解説が、本書においては難解な本書の見事な案内役としてあるだけでなく、当書そのものへの批判的考察、また読み手である日本人に対しての人種主義を省みるメッセージが多分に含まれていることである。 これは単に著作の理解を高めるだけでなく、正解がない学問領域の専門書を如何にして批判的に・内向的に読むか?という、「読み方」の向上に大いに寄与するものだと思っており、良書の証だとも言える。 簡単ではなかったが、読み終わった後にもう一度最初から再読したいと思えるし、定期的に読まなければと思える本。
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