コンビニに生まれかわってしまっても 新鋭短歌シリーズ

西村曜(著者)

• 販売会社／発売会社: 書肆侃侃房
• 発売年月日: 2018/08/01
• JAN: 9784863853287

商品レビュー

2024/06/15

2024/06/15　もくじ-p.141

p.10
”シマウマが水玉模様の世界ならたぶんきみとは恋仲だった”
そんな世界線に生きていない僕らだから、ずっと友だちでいよう。

p.16
”妄想のなかであなたに触れたけど俺の感触しかしなかった”
大切な人たちとハグをしたいです。

p.21
”まだ俺はやれると俺を騙しつつ陰雨のなかで続く生活”
自分の感情を否定したり抑え込んだりするとそのうち動けなくなってしまうので、おすすめしません。

p.26
”「smileの綴りはスミレとおぼえてた」どうりでそんなふうに微笑む”
お相手の感性が好きです。

p.30
”死にたいとつぶやいたこと知ってるよ赤いダリアの咲くアイコンで”
しにたい僕らのことばはネットの海を漂ってどこまで行ったのでしょう。

p.31
”かんたんに死ぬと言うなとかんたんに言うな夜中の雨は見えない”
これ、好きです。簡単に言わないでください。しにたくなるほど追い詰められ傷ついている人の心に寄り添うこともできないくせに。

p.39
”こしあんパンほどに優しいひとだからかばんの底でつぶれてしまう”
優しい人が健やかに穏やかに過ごせるせかいならいいのに……。
わたしはこしあんパンが好き。

p.50
”二人して死ねたらいいが落ちている軍手はいつも片方だけだ”
大切な人とふたり、同時にこの世からいなくなることができたらいいなぁと憧れるのですけれど、死後のせかいも一緒とは限らないので巻き込むことはしたくないです。

p.54
”起きておきて、ホットケーキの日だよって朝の光がもう膨れてる”
ホットケーキを楽しみに起きる日を増やしたいです。作るのも食べるのも自分なのですけれどね。

p.59
”レールから逸れてしまった人生も歩けば空にほら、くじらぐも”
空を見上げる余裕があれば、大丈夫です。空を見上げることを忘れないようにしたいです。

p.68
”ほんとうに好きにやったら怒るのにあなたは好きにしろとだけ言う”
期待しないでほしいです。僕は生まれたくなかったのに、連れきたのはあなたたちです。

p.76
”ときおりは触れ合う手と手　繋いだらなんて名の付く僕たちだろう”
関係性に名前なんてつけずにずっと手をつないでいたいです。そばにいたいです。

p.140
”わたしは疲れ、体調を崩し、すきだった本も読めなくなって、けっきょく就職はできず、”
わたしも。まったくうまくいきませんでした。それもまた人生。

2024/02/16

これはいい。小洒落た感じじゃなくてなんていうかほぅっと心に入ってくる感じの詩集。夜に窓辺で読みたい1冊。
だったんだだったんだと行く鈍行で俺はあなたが好きだったんだ

2023/10/29

■以下よかった短歌

コンビニに　生まれ変わって　しまっても

サブウェイの　店長として　一生を　終える他人が　とても愛しい

百均で　迷子になっても　これ全部　百円だって　思って走れ

ポケットティッシュ　受取り礼を　言われてる　この世がますます　分からなくなる

真ん中で　割れたハートの　絵文字、おれ　そんなにキレイに　壊れられない

シマウマが　水玉模様の　世界なら　多分君とは　恋仲だった

大会が　終われば無職　だと聞いて　水泳選手に　親しみが湧く

上あごに　海苔を貼り付け　剥がすなど　して有意義な　土曜日でした

暴動の　ニュースを消せば　暴動は　消える僕らの　手のひらの上

TPP PPAP 帰還兵　16% PTSD

妄想の 中であなたに 触れたけど 俺の感触 しか無かった

行きずりの 恋がしたいと 言う人と 俺は人間 関係したい

いつだって 些細なこと 気にしてる トトロ、お前は 傘返したか

からあげを くん付けで呼ぶ この夜に 孤独紛らす 売り物はなし

持ってません 温めません 付けません 要りませんいえ 泣いてません

あなたのその エクボに小指 入れられる 中になるため まずは働く

たいへんだ　心の支えに した棒が 心に深く 突き刺さってる

ピクニック って想像上の 生き物だ それにあなたが いたりしていて

痩せてゆく ことしかできぬ 石鹸を 痩せた体の くぼみに当てる

「もしもし」と あなたが言って 俺はその 「もしも」の音に 慄いていた

花占い アプリをめっちゃ タップして 花むしってる 君が怖いな

かんぜんに イントネーション 「水死体」 だったよいまの 恋したいって

smileの 綴はスミレと 覚えてた どおりでそんな ふうに微笑む

かんたんに 死ぬと言うなと かんたんに 言うな夜中の 雨は見えない

一輪車 逆上がり、キス 七の段 やればできたと 今でも思う

独り身の　バイト帰りの 自転車の 俺を花火が どぱぱと笑う

はじめての 祈りのように うまく手を 組めないまんま 2人歩いた

ひまわる、と 謎の動詞を 生み出して 君とひまわり みに行ったよな

いつまでも 実家暮らしは アレだしと 言う俺自身 分からないアレ

カワハギは、 皮を剥がれる 前提の 名前であれば 大嫌い、人

不思議なの 世界がお墓で いっぱいに ならないことが。 無理をしてるの？

今ここに あるものだけで しりとりを。 寒さ、寂しさ さまんさたばさ

一生の お願いを言う 9歳が 13歳が 52歳が

おとおとは かつてペニスに 付けていた あだ名を忘れて 生きる、正しい

このむねと チャリのチェーンを 軋ませて 会いたい人に 会いにいくのだ

「花束」の　手話がわからず　思いきり　抱きしめてみる　たぶんあってる