商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
発売年月日 | 2018/06/01 |
JAN | 9784309256023 |
- 書籍
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鏡花人形
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鏡花人形
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地下鉄の根津駅のホームから地上へと続く階段は、どこからともなくしみ出してくるぬるい水が側溝を濡らし、生乾きのコンクリートのような匂いを発している。真夏だというのに、近ごろは、にわか雨も、夕立さえもない。 地上に出て、言問通り沿いの坂道をのぼる。容赦ない陽射しによって肌が焼かれ...
地下鉄の根津駅のホームから地上へと続く階段は、どこからともなくしみ出してくるぬるい水が側溝を濡らし、生乾きのコンクリートのような匂いを発している。真夏だというのに、近ごろは、にわか雨も、夕立さえもない。 地上に出て、言問通り沿いの坂道をのぼる。容赦ない陽射しによって肌が焼かれ、痛い。汗は肌の表面に出た瞬間に蒸発して、アスファルトから立ちのぼる熱気と溶け合う。 私は、坂道をのぼる。 くらくらとして、眩暈を覚えながら・・・ てな感じで、小説の世界に入りこむような心持ちで、東大の外壁沿いに左折してしばらくすると弥生美術館がある。この本はいま開催中の「鏡花人形展」の公式ガイド本。 表紙は球体関節人形ブームを起こして有名な吉田良氏が、泉鏡花の高野聖の世界を再現した人形。 端正な顔立ちなのに、見る人を不安にさせる。妖艶という形容がふさわしい。近寄りがたいけど触れたいという感覚。眼を覗き込んでも、視線が合うようで、合わない。右眼が斜視なのだ。吉田氏がそれを意図したのかどうかわからないが、効果としては抜群だ。 会場の照明が、作品が表現している世界観に対して明るすぎたのが少し残念だったが、この本の中の写真は影が差して、人形の凄みが増していて良い。美術館の設備の問題があったのかもしれないが、こんな感じで展示すればいいのに、と思った。 今回展示されている作品は、吉田氏とその弟子たちの作品。球体関節人形というと、ゴスロリ風の人形のイメージが強かったけど、ちょっと見方が変わった。昔はこういうのは蝋人形とかマネキン人形を改造したりして表現していて、どこか作り物っぽさを残していたと思う。でも今回の人形は違う。うまく言えないけど、見てもらえればわかると思う。 人形ばかり説明したが、鏡花の本の装丁とか、発表当時、挿絵として描かれた絵も素晴らしい。鏑木清方とか、小村雪岱とか、橋口五葉とか、錚々たる顔ぶれ。この展示作品もできれば収録して欲しかった(載ってない訳じゃないけど少ない) 来年は江戸川乱歩でやってくれないかなぁ・・・
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