商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 羽鳥書店 |
発売年月日 | 2018/05/20 |
JAN | 9784904702703 |
- 書籍
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『ハッピーアワー』論
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『ハッピーアワー』論
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商品レビュー
4.5
5件のお客様レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
映画「ハッピーアワー」を元町映画館にて2022年の年末に鑑賞することができた。映画を受け入れるのに、補助線がいると、この本を購入。 以下、この本を補助線に映画「ハッピーアワー」について思考する。 重心の探り合い。人を頼ること、だれかとの間にある正中線に身を置くこと。それが幸福の時間である。というのが映画「ハッピーアワー」のそのタイトルの意味と言える。くだらない飲み会、夫婦生活のような、自分の行動が相手を慮ったり想像したりして発生する時間。自分の行う行動の動機が主体性の内にはなく、その関係性の間、間主観的に存在している状態。そういう状態を幸せというのではないかと提示する。 自立しすぎていた公平に対して純が言い放つ「つまらん。」、「生活の中で殺された」という言葉はまさにその逆で、彼女にとって自立していた公平との時間はアンハッピーな時間と言えたのだろう。 情報の伝達や個々人が自立している状態は主体ー客体の関係であるが、ハッピーアワーは主体客体の一体化と呼ぶべき状態。ただそれらは不安定な前提に立っている。みんな何かを隠していたり、噓をついているかもしれない。純が離婚調停中であることを隠していたように。周りの人は自分のことを本当は好意的に見ていないかもしれない、仕事上の関係の延長にあるかもしれない、それでも差し出してみる。その先に幸福な時間がある。 他者との関係性が変化すれば、正中線は変化するものである。今まで言えなかったものを言えたり、できる振る舞いがある。純の消失という変化が主人公たちの生活に変化を与える。 「鵜飼くんに(会いに来た)。」と講演会にきたあかりがいうシーン。今まではあかり自身が言えなかったであろう言葉。それが言葉に出てしまうのは、純がいなくなったことによって、周りからの期待や信頼が変化したからである。自身の言動・行動が変わったことを自己認識する。つまり、「自分は鵜飼くんに会いに来たかったんだ」と事後的に初めてあかりは気づく。思考の変化から行動の変化ではなく、その逆。思考が後から追いかける構造がここで発生している。 シンガポールに駐在している際、一人でいることを強制させられた。差し出す相手がいなく、大変につらい時間だった、アンハッピーアワーだった。誰かと正中線を合わせることはなかった。 この経験は間違いなく僕に変化を与えていて、その変化によってさまざまな関係性を変化させている。 関係性の変化は仕方がない、僕の周りにいる友人や仕事仲間全員にとっていい変化ではないかもしれない。 でもそうするしかなかった自分がいる。 ある種の我儘さを受け入れる、その我儘さは自発的にというより間主観的に発生するのだから。 その我儘さを美しいものとして投影するこの映画「ハッピーアワー」は我々を少し生きやすくする。 元町映画館で年末映画「ハッピーアワー」を見た。鑑賞後、演者の舞台挨拶があった。 そこで、演者ら全員が言っていたのは、この映画が内面化されすぎて、切り分けることが難しくなっているということだった。まさに彼らは濱口監督や演者同士の関係性の中にいて、自分であり、自分でないような間主観的な状態になっていてそれが幸福であるのだと大変に感銘を受けたことを最後に記しておく。
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台詞がここまで映画に作用するとは思わなかった。そのことに改めて気づかされた。「重心」と「変化」についても、ここまで緻密に言語化されていると気持ちいい。
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この本と濱口竜介『カメラの前で演じること』を読んでしまうことでハッピーアワーの謎めいた雰囲気に意味がつけられてしまい、ハッピーアワー自体を固定的に観てしまうようになるかもしれない(それほどこれらの本に強度があるということで、もちろんそれぞれの著者はそれを決して望んではいないし回避...
この本と濱口竜介『カメラの前で演じること』を読んでしまうことでハッピーアワーの謎めいた雰囲気に意味がつけられてしまい、ハッピーアワー自体を固定的に観てしまうようになるかもしれない(それほどこれらの本に強度があるということで、もちろんそれぞれの著者はそれを決して望んではいないし回避しようとしている)。ただし、そのマイナスの可能性を補って余りある他者の解釈を知ることの喜びと驚きがある。
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