商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 名古屋大学出版会 |
発売年月日 | 2017/07/01 |
JAN | 9784815808792 |
- 書籍
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私にはいなかった祖父母の歴史
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私にはいなかった祖父母の歴史
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商品レビュー
4.5
3件のお客様レビュー
会うことのなかった祖父母の記憶と記録を求めて歴史が浮かび上がる.この読み応えのある内容はずっしりとお腹にたまってなかなか消化しきれない.祖父母のありえたかもしれない事を史実と想像力で補って父たちにつながり今の自分へと流れている奇跡.共産主義やユダヤ主義に反ユダヤ主義,ファシスト政...
会うことのなかった祖父母の記憶と記録を求めて歴史が浮かび上がる.この読み応えのある内容はずっしりとお腹にたまってなかなか消化しきれない.祖父母のありえたかもしれない事を史実と想像力で補って父たちにつながり今の自分へと流れている奇跡.共産主義やユダヤ主義に反ユダヤ主義,ファシスト政権や難民問題.助け合う人々がポーランドからパリへと舞台を移して語られる.調べ尽くす執念に圧倒されました.
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
・ 歴史家である著者の父方の祖父母、マテス・ヤブウォンカとイデサ・ヤブウォンカ。著者が会うことが叶わなかった二人の生を、わずかな記録と残された証言、関連の資料と懸命の聞き取りによってたぐりよせ、「歴史」として浮上させようとする企て。調査と探究の結果だけではなく、調査する著者と、著者の父親をはじめとする協力者たちとのかかわりややり取りも合わせて書き込んでいくドキュメンタリー的なスタイルは、それ自体としてスリリングなミステリー小説のようでもある。 ・ もちろん、そのことは、著者の仕事のアカデミシャンとしての達成をいささかも毀損していない。あくまで祖父母の生きた目線に即して語ろうとする意志に貫かれた叙述から見えてくるのは、ポーランドの地方都市に生まれたマテスとイデサがなぜ共産主義者になったのか、ソ連に夢と理想を託したのか、ということであり、1930年代のポーランドにおける反ユダヤ主義的な社会の息苦しさであり、難民や亡命者を冷淡に扱った第二次大戦前夜のフランス社会の生々しいありようである。その中で祖父母は、フランスの人権団体の支援と、自らの裁判書類を持参し、しかもフランス政府には旧姓を届け出たイデサの機転と、互いを互いに難民として証言しあうユダヤ人コミュニティのつながりと、相当の幸運とによって、パリに残ることができた。そのことを著者は、当時モスクワからパリに返還されたばかりだった膨大な内務省資料、警察関係のマイクロフィルムを手がかりに、探りあてることができた。 ・ 最終章「世界の向こう側」での、アウシュビッツ=ビルケナウに送られて以後のマテスとイデサのありようを語っていく圧巻の叙述は、それまでの二人の生を可能な限り丹念に追いかけ、一人の生きた人間の姿と声とを文字の上に呼び戻した結果としてある。収容所に送られた瞬間が「終わり」なのではない。イデサとマテスが離ればなれになり、イデサはすぐに、マテスは恐らくは「ゾンダーコマンド」として働かされた後でガス室に送られ、死体を身ぐるみはがされて焼却炉に積まれ、灰になって埋められたか川に捨てられたかしたその最後までを、目を背けずに追いかけること。その姿勢にこそ、著者の歴史家としての矜持があらわれているし、その姿勢ゆえにこそ、自らのユダヤ人というアイデンティティから自由になりたいと葛藤しながらも、最後は「ユダヤ人」であるがゆえに生を断ち切られてしまった若い夫婦の悲惨さが、読者の胸にずんと重く響くものとなっている。
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比類のない読書体験。今後、胸を動かされるような本に出会ったとき、つねにこの本のことを思い出して、自身の読書体験を比較・参照することになるだろう。
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