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人類最期の日々 普及版(上)
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人類最期の日々 普及版(上)

カール・クラウス(著者), 池内紀(訳者)

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人類最期の日々 普及版(上)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 法政大学出版局
発売年月日 2016/11/01
JAN 9784588490347

人類最期の日々 普及版(上)

¥5,170

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2017/03/09

手に入れることが難しくて読むのを諦めかけていた「カール・クラウス著作集」内の「人類最期の日々」が、突然普及版として出版された。どうしてひとつの作品に、著作集の二巻をかけたのかは手にとって初めてわかった。文豪の大長編とはまた趣(おもむき)の全く違った「大作」「長編」だったのである。...

手に入れることが難しくて読むのを諦めかけていた「カール・クラウス著作集」内の「人類最期の日々」が、突然普及版として出版された。どうしてひとつの作品に、著作集の二巻をかけたのかは手にとって初めてわかった。文豪の大長編とはまた趣(おもむき)の全く違った「大作」「長編」だったのである。 書き下ろしの池内紀氏による「上巻のための解説」を読めば、日本ではあまり知られていない、この希代のジャーナリストであり、文明批評家、詩人、劇作家の正体が垣間見える。 本文をしばらく読んで、訳者がこの本を再刊した意味を予想した。おそらく「現代」が1914年のこの時代に瓜二つになってきたからだからなのではないか。今、第二のカール・クラウスが必要である。という想いなのだろう。 当時のメディア、街角から、ありとあらゆる情報、声を拾って、いつ終わるともわからない劇としてまとめるやり方は、実は情報社会の現代にこそ、必要だと思える。「現代の全体」を「事実」で再構成する作業には、実は「最も先鋭な思想」、「豊かな教養」が必要であり、まだ見ぬその作業は、その作り手さえ現れれば、現代は瞬時に(YouTubeなどで)世界に発信出来るだろう。 私には無理だ。是非、一度これを手にとって、志のある方は創って欲しい。 例えばオーストリア外務省のこういう場面。 伯爵「三、四週間で和平の空じゃな」 男爵「相変わらずの底なしの楽観ですな」 伯爵「すると貴公はいつ頃とな?」 男爵「ニ、三ヶ月ではとても無理でしょうな。たとえどんな事がすんなりいくとしても二ヶ月はかかりましょうよ」(49p) ←第一次世界大戦は、このような「底なしの楽観」から始まったらしい。それは、あの日中、太平洋戦争でも同じだった。 愛国者「新聞の見出しを読むだけで充分ですよ。大戦の状況、手にとる如しですな。敵方がどんな体たらくで、我国が如何に揚々たるものであるかがです、ピンときますもの」(81p) ←ウィーンの街角ではこんな会話。マスメディアが愛国者を鼓舞し、その声がまたマスメディアを鼓舞する、悪循環。 そして第29場。楽天家と不平家の会話は、ヨーロッパにも禅問答のようなものがある事を知らしめるだろう。文明化の行き着く先の最初の世界大戦の、諧謔に満ちた抽象化が、そこにある。それは下巻において、更に先鋭化するに違いないと予測できる。私は、やがて下巻の感想をも書かねばならない。 2017年2月28日読了

Posted by ブクログ

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