商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 白水社 |
発売年月日 | 2016/11/01 |
JAN | 9784560095164 |
- 書籍
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娯楽番組を創った男
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娯楽番組を創った男
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向き合わなくてはならない、良く知らなくてはならないけれど、よくわからない相手。彼らに受け入れられたいくせに、受け入れられなくても「だからあの人たちはわかってない」と負け惜しむ。大衆もしくは消費者(私はユーザーってよく言うけど)とは、仕事をする上でそういう厄介な関係だ。書評が出たと...
向き合わなくてはならない、良く知らなくてはならないけれど、よくわからない相手。彼らに受け入れられたいくせに、受け入れられなくても「だからあの人たちはわかってない」と負け惜しむ。大衆もしくは消費者(私はユーザーってよく言うけど)とは、仕事をする上でそういう厄介な関係だ。書評が出たとき気にならなかったのに、この本をふと読む気になったのは、先日の「折々のことば」で取り上げられていたこの一節が引っかかったから。 「大衆が見たがるものを提供しているのは、大衆自身である。」 ラジオ時代のNHKで、番組制作に携わった丸山鐵雄という人物の評伝。ラジオ放送の黎明期、どんな番組を流すかについて、例えば高尚な芸術を与えることで大衆の芸術感覚の向上を導こうという周囲に対し、丸山は、大衆が好む大衆芸術の優れたものには、外面的な面白さと同時に内面的な面白さがあって、それが大衆の「芸術的感覚」を自然と向上させると考える。私、ここに「そうそう」と頷いてメモまで取ってしまった。そして丸山のその考えは戦後「のど自慢素人音楽会」に結実する。大衆による参加型の、大衆自らが作る、大衆自身が見たがる番組。そこに上から指導しようという要素は入らないが、一方で素直で健全な歌い手が評化される審査基準を設け、番組を聴く大衆はこうして「何が不健全な歌かを自然に学ぶ。」という。あれ?これでいいのか?私は「内面的な面白さ」ってエンタメ小説でありながら読後に深く考えさせる、たとえばそうですね、宮部みゆきの「火車」とか、まだまだもっとあるけれど、そういうものかと思ったんだけど、宮部さんは別にそこで何か我々を導こうとは思ってなかったと思うんだけど、のど自慢の審査基準って、大衆が自発的な風を装いつつ、正しい道に「指導」してないか? 怖くなった。そうだ、メディアは大衆の参加を呼びかけながら、投稿を選別したり、「主旨を変えない程度に」直したりする。大衆はメディアの顔色をうかがいながら選ばれるよう工夫するようになる。お互いのこと利用してるみたいだ。 サブタイトル「サラリーマン表現者の誕生」についてはあまりピンとくるところはなかったが、「サラリーマン」の集合体であるメディアが大衆に向き合うとき、ということならわかる気がする。いずれにせよ、私は優れたメディアと大衆との関係論として読んだ。 あとラジオ黎明期のNHKの話も大変興味深く読んだ。戦争で家族が招集されてラジオの普及率があがったとか、加入もあったが解約も多かったとか、ラジオや聴取料の値段とか、コンテンツの話とか。知らない話だけに非常に興味深い。当時からやっぱり官僚組織なNHK!
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