商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | アトリエサード/書苑新社 |
発売年月日 | 2016/10/27 |
JAN | 9784883752430 |
- 書籍
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ウェンディゴ
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ウェンディゴ
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ヴィクトリア朝時代の英国産まれの作家、アルジャーノン・ブラックウッド。掌編から長編まで二百篇近くの作品を著し、未だ邦訳されていない作品も多い多作の作家です。手掛けたジャンルもホラーからファンタジーまで幅広く、それは彼が好奇心旺盛で、あらゆるものに接する性質だったからとも。 本...
ヴィクトリア朝時代の英国産まれの作家、アルジャーノン・ブラックウッド。掌編から長編まで二百篇近くの作品を著し、未だ邦訳されていない作品も多い多作の作家です。手掛けたジャンルもホラーからファンタジーまで幅広く、それは彼が好奇心旺盛で、あらゆるものに接する性質だったからとも。 本書は、そんなブラックウッドの作品から『超自然的恐怖』をテーマに、表題作である『ウェンディゴ』など3作の中編を収録。いずれも一世紀も前の作品ながら、現代のそれと比較して遜色を感じられないほどに表現豊かな作品です。 以下、なるべくネタバレなしの各話感想。 --------------------------------------------------------- 『ウェンディゴ』(1910) その年。キャスカート博士とその甥、二人の現地ガイドで構成された一行は、カナダの森林で狩猟を行っていたが成果は捗々しくなかったため、ガイドの一人が場所替えを提案する。その場所を聞いた時、もう一人のガイドが明らかに拒絶の表情を見せたことを博士と甥は見逃さなかったが提案に乗ることに。次の日、二手に分かれた一行だったが、一方が道中で奇怪な体験をすることに――。 (カナダの森林地帯に棲むとされる怪物の伝説を題材とした傑作恐怖譚。怪物の存在を明示しながらも詳細は仄めかしに留められており、その正体不明感が読者の恐怖と想像力を掻き立てる。ラヴクラフトが絶賛し、ダーレスが参考にしたことから後にクトゥルフ神話に逆輸入される。) 『砂』(1912) ある時。文明嫌いで放浪癖のあるヘンリオットは、ふとその衝動に駆られてエジプトを目指した。ホテルの食堂で不釣り合いな男女のカップルを目にした時、ヘンリオットは片割れの女性の、その妖しさに目を奪われる。その後、女性からある提案をされ、ヘンリオットは葛藤の末に了承することに――。 (エジプトを舞台に古代の秘教的儀式を行おうとするオカルティストに巻き込まれた男の顛末を描いた幻想譚。彼が引けぬところまで引き寄せられるまでの描写は丹念だが冗長に感じる人がいるかもしれない。しかし終盤の儀式のくだりは、舞台を言葉で表現しているかのように濃密で美しく、そして結末は……。) 『アーニィ卿の再生』(1914) 教師のヘンドリクスは、公爵の一人から息子の再教育を依頼される。息子である彼――アーニィ卿は身分や外見は恵まれているが、精神に活気がないことが問題だった。旅行による見聞で彼を目覚めさせようとするが上手く行かずに途方に暮れていたヘンドリクスは、次の来訪地を、かつて世話になった恩師が住む地に決める。そこに向かう途中、アーニィは遠い尾根で火が燃えている様を見てなぜかひどく興奮する。そんな彼に不安を抱きつつ先を急がせるヘンドリクス。その二人の前に突然現れたのは――。 (フランスの山中で、若者とその教師が異端の祭祀に参入することになる神秘譚。それまで淡白だったのに、夢中になれるものが見つかった途端に情熱的に豹変する作中のアーニィが現代の若者と重なり、展開はおどろおどろしくもティーンズホラーとも言える部類の作品だろう。)
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ナイトランド叢書内のもう一冊のブラックウッド、ウェンディゴも読んだ。この本はともかく表題作に尽きると言ってもいい。凍える虚空に響く声とそこから喚起される強烈なイメージ。しかも物語内の登場人物が目撃せずに脳裏に描いたであろうそのイメージを、直接描写せずに読者にも同じように想像させる...
ナイトランド叢書内のもう一冊のブラックウッド、ウェンディゴも読んだ。この本はともかく表題作に尽きると言ってもいい。凍える虚空に響く声とそこから喚起される強烈なイメージ。しかも物語内の登場人物が目撃せずに脳裏に描いたであろうそのイメージを、直接描写せずに読者にも同じように想像させるのが驚くほど上手い。無理矢理にでもクトゥルフ神話に盛り込みたくなる気持ちがよくわかった(笑)。 「砂」は「いにしえの魔術」に収録されている「エジプトの奥底へ」の姉妹作品のような内容だが、私は断然「エジプト─」の方が好き。「アーニー卿の再生」もブラックウッドらしくて良かったです。
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1910、1912、1914年に書かれた3編を収めた中編小説集。 改めて読んでみると、ブラックウッドは文章が上手くないと感じた。翻訳のせいもあるかもしれないが、比喩が下手だったり、文章がくどかったりもする。このために幾分読みにくく、物語に今ひとつ没入しにくい。物語内容はホラー...
1910、1912、1914年に書かれた3編を収めた中編小説集。 改めて読んでみると、ブラックウッドは文章が上手くないと感じた。翻訳のせいもあるかもしれないが、比喩が下手だったり、文章がくどかったりもする。このために幾分読みにくく、物語に今ひとつ没入しにくい。物語内容はホラー/怪奇小説の古典としてそれなりに良いものと思う。 最後の「アーニィ卿の再生」(1914)を読んで思いついたのは、ここで主人公らを魅了する「山の民」の異教的・原始的な祭典は、1913年に初演されたストラヴィンスキー/ディアギレフのバレエ「春の祭典」のイメージとかなり似通っている。このバレエを視聴してパリの観客が嫌悪し、憤慨したその<原始>イメージは、何も「春の祭典」だけが持つ画期的なものではなかったろう。それはヨーロッパ人が既に知っている文化的<記号>を表明していただけではないのか。 この<原始>は1936年にアントナン・アルトーがタウラマラ族と出会って喚起されたイメージとも重なるし、もっと後にパゾリーニ監督が映画で表出したものとも通底している。ただしそれらは反=近代性の記号であるために、常にマイナーな文化として、一部のカルト的な支持を得ただけであったのではないか。 ホラーはもともとカルト的なジャンルなので、このような負の文化記号はむしろ一般的であり、オカルティックな祭礼の主題は大量のホラー映画で繰り返され続けている。ブラックウッドが呈示したものは、それらの典型の一つと言えるかもしれない。
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