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愛と痛み 死刑をめぐって 河出文庫
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愛と痛み 死刑をめぐって 河出文庫

辺見庸(著者)

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愛と痛み 死刑をめぐって 河出文庫

704

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 河出書房新社
発売年月日 2016/08/01
JAN 9784309414713

愛と痛み

¥704

商品レビュー

4

2件のお客様レビュー

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2017/09/21
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※このレビューにはネタバレを含みます

初読。死刑制度を政治的にとらえ、戦争と死刑を結び付けて論じる。日本が「死刑を文化のなかに埋め込んでしまった国」と見られていたという視点は、私には新たな切り口だった。

Posted by ブクログ

2016/08/11

今月20日に初版発行という辺見庸さんの新刊本。 2008年に毎日新聞から刊行された「愛と痛み―死刑をめぐって」に、短篇「朝の廃墟」を追加して文庫化したものです。 私はこの単行本も持っていますが、文庫でもそろえたいと思いアマゾンで買いました。 ええ、長年の大ファンです。 「死刑」は...

今月20日に初版発行という辺見庸さんの新刊本。 2008年に毎日新聞から刊行された「愛と痛み―死刑をめぐって」に、短篇「朝の廃墟」を追加して文庫化したものです。 私はこの単行本も持っていますが、文庫でもそろえたいと思いアマゾンで買いました。 ええ、長年の大ファンです。 「死刑」は、辺見さんの長年のテーマになっています。 本書は、辺見さんが死刑についてまとめた本格的な論考集といえます。 辺見さんは死刑に反対の立場から、筆を進めます。 ただ、「死刑には抑止効果がない」など論理的にではありません(そんな本はいくらもあるでしょう)。 あくまで、読み手の情感に訴え、それがいかに不合理かつ残酷極まりない刑罰であるかを説くのです。 たとえば、「死刑囚を吊るしたロープの軋む音がするだろう。死刑囚が落下していく瞬間に脛骨がバキッと折れる音がするだろう。舌骨が砕ける音がするだろう。鼻血が垂れ、失禁された尿が漏れ、脱糞や射精のあとが漏れだすだろう」といった具合に。 辺見さんは、自身と、そして読み手をも挑発します。 死刑を支えているのは、何も死刑を積極的に支持している人たちだけではない、むしろ、死刑に無関心だったり、あるいは否定している人たちでさえも死刑の存置に手を貸しているというのです。 辺見さんはこれを「黙契(もっけい)」と呼びます。 メディアは、「死刑」を周到に私たちの目から隠します。 隠すというより、できるだけ日常の諧調を乱さないように報じるのです。 たとえば、メディアは「刑を執行した」とは言っても、「絞首刑にした」とはいいません。 当局も、死刑執行日を入念に検討します。 本書によれば、2013年9月12日の死刑執行は、2013年9月12日でなければなりませんでした。 前回の死刑執行は4月26日でした。 ブエノスアイレスでのIOC総会は9月6日から10日まで。 その間はオリンピックの東京招致キャンペーンに血道を上げました。 アルゼンチンは2008年、死刑の廃止を目的とした国際規約に批准しており、死刑問題には敏感です。 オリンピックの東京開催が決定するまでは、絞首刑執行というネガティブ・イメージを消しておく必要がありました。 「さて、オリンピックの東京開催が決まるやいないや『お・も・て・な・し』が一変して『こ・う・しゅ・け・い』である」 秀逸な文学作品を残した永山則夫が死刑執行される時、日本文藝家協会理事長の三浦朱門はこう応えたといいます。 「とくに感想はありません。法律は法律だし、文学作品を書く人の業績は業績です」 個人的には、最も死刑に敏感であるべき文学者まで、この程度の認識なのです。 残念でなりません。 同じ文学者でも、死刑の本質を鮮やかな文章で突いたジョージ・オーウェルの爪の垢を煎じて飲ませたい。 レビューの最後に、オーウェルの「絞首刑」から、次の文章を孫引きします。 熟読玩味されたし。 「この男は、べつに死にかけているわけでもなんでもない。われわれと全く同じように生きてピンピンしているのだ。彼のからだのすべての器官は、ちゃんと働いている―腸は食物を消化し、皮膚は新陳代謝を繰り返し、爪はのび、組織は形成され続ける、というふうに、―すべてが、滑稽なほど厳粛に、そのいとなみを続けているのだ。彼の爪は、彼が絞首台の踏み板の上に立ったときも、十分の一秒間だけ生命を保ちながら空中を落下していく、その瞬間にも、相変わらずのび続けるのであろう。…彼の脳は、依然として、記憶し、予想し、思考し―水たまりのことさえ推理しているのだ。彼とわれわれとは、いっしょに歩きながら、同じ世界を見、聞き、感じ、理解している仲間なのだ。ところが、二分後には、突然、ガタンという音とともに、この仲間のひとりが消え去ってしまう―心がひとつ減り、世界がひとつ消滅するのだ」

Posted by ブクログ