コーネル・ウェストが語るブラック・アメリカ 現代を照らし出す6つの魂

コーネル・ウェスト(著者), クリスタ・ブッシェンドルフ(編者), 秋元由紀(訳者)

• 販売会社／発売会社: 白水社
• 発売年月日: 2016/08/01
• JAN: 9784560092491

商品レビュー

2023/09/23

哲学博士としてハーバード大学等で教鞭を取りつつ、人種問題に関する一級の論客として著名なコーネル・ウェストが、黒人の人種問題を語る上で重要な6人の思想家・活動家について、対談という形でその重要性や思想的意義を解く1冊。

6人のうち、自分自身が予備知識を持っていたのはマルティン・ルーサー・キングとマルコムXの2人だけであったのだが、6人全てにおいて、肯定的な評価はもちろんのこと、後世から見たときに見えるその思想の限界についても言及するなど、フラットな評価が垣間見えた。

優れた説教師や演説家というのは特有のリズムを持ち合わせているものだが、実際、コーネル・ウェスト自身は自らヒッポホップのミュージシャンとしての顔も持ち合わせており、音楽に関する愛着も深く、米国のヒップホップミュージシャンらからの信用も厚い。本書は対話形式であるため、そうした稀代の人物の生の肉声に近いものに触れられるというのも面白さの一つであった。

2020/10/14

映画『私はあなたのニグロではない』の公式ブックガイド https://www.magichour.co.jp/iamnotyournegro/book/ にて紹介されていたので読んだ。哲学や宗教の知識がないため読みづらい部分もあったが（特にフレデリック・ダグラスの章）、全体には「ブラックの預言者的精神」を軸として歴史上の六人のブラックの偉人の功績を学びながら、現代社会の問題についても理解を深めることのできる非常に有益で面白い読み物だった。マルコムXとの対比で穏健派のイメージが強いマーティン・ルーサー・キングJr.牧師のラディカルな面に焦点を当てた部分と、ブラック初の合衆国大統領オバマを容赦なく批判した部分が特に印象に残る。何より、コーネル・ウェスト博士の勇気と情熱に気持ちを奮い立たせられる一冊。