商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | KADOKAWA |
発売年月日 | 2016/02/01 |
JAN | 9784046533166 |
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数寄語り
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いにしえの茶には季節性が希薄だった、それは現代と違って身の回りが季節そのものだったから。現代の室内からは寒暖が消え、明治以降に和歌が茶掛けの主流になり、季節に拘泥するようになった。 遠州流の宗実家元が、先代の宗慶家元が「何よりも炭手前が大事だ」と常日頃言っていたという。老いた腕で...
いにしえの茶には季節性が希薄だった、それは現代と違って身の回りが季節そのものだったから。現代の室内からは寒暖が消え、明治以降に和歌が茶掛けの主流になり、季節に拘泥するようになった。 遠州流の宗実家元が、先代の宗慶家元が「何よりも炭手前が大事だ」と常日頃言っていたという。老いた腕で釜が持ち上がらなくなっても、炭手前は欠かさず代わりに息子に釜を持たせた。炭が大事なのは、ついこの間まで火が灯りで唯一の熱源であり、日常炭火は炉にあった。この所帯染みた当たり前の物が改まらないとハレの茶にならないから。流儀の型に嵌った炭手前では意味がなく、前の炭が火力を保っていれば継ぎ足さないこともある。いずれにしても最初にするのは炭の検めである。 著者が茶道具の収集を始めたばかりの頃、光悦の茶碗とされるものを買い、林屋氏の宅に参上して風呂敷を解き箱の紐に手を掛けると「いや、お仕舞い下さい」と、見ないでも良くない物だとわかった。 税制改革などの諸要因から限られた者だけが限られた道具だけでやっていた数寄が廃れ、代わりに一世を風靡したのが大衆による名物道具無用の「茶道」だった。千家十職なる括りも百貨店が販売促進で考案したらしい。明治政府が茶の家元に与えた「遊芸稼ぎ人」という鑑札に対して玄々斎が「茶道の源意」という口上書を起草し、遊芸と修行という相反するベクトルを茶道に内在させ、それが普及の原動力ともなり障壁ともなっているとする。遊芸では素人は玄人を気取るものではなく、愉快に習って師匠を生活面で応援するのが粋な旦那である。 茶の湯には2つの座標軸があり、第一は流儀を超越して共有するコモン・フォーマットで、第二は流儀ごとの細かい違い。数寄者は第一座標軸だけを抑えておけばよく、第二座標軸は個性を際立たせるための格好の標的にすらなる。 酒器好きの小林秀雄や白洲正子など茶の湯の名物を使わず茶と遠ざかるのは柳宗悦の影響で、茶の湯本歌論が蔓延し過ぎたので文化運動だった。本当に丁寧にものを見て知って現れたのではない。喜左衛門井戸を至上の民藝と褒めるが、あれは雑器ではなく祭器だった。 茶の湯の転換と建築意匠の変遷が似ている。19世紀の饒舌なまでの装飾が幾何学的なアールデコになり装飾を排したバウハウスのモダニズムに行き着いたのと、窯変天目の饒舌が気天目の寡黙に変わり、長次郎の無作為に至ったのと。そしてモダニズムに飽きた後は再びポストモダンの色艶を楽しむ風潮が出てきたのと、織部や光悦の茶の湯と。 光悦の茶碗は、天下の能書家である光悦の造形意識が立体にまで及んでいる。千宗屋の利休の茶杓は竹を使いながら竹の素材感を否定して理想にする形があってそれを竹という身近な素材で作りだしているが、演習は一転して竹を選ぶところからスタートし、竹という素材を全面的に飲み込んでいかにその竹を生かすかというところに意識が変わっているという指摘。林屋さんの80歳になった小堀宗慶家元の茶、点前が何とも言えない素晴らしさだったが、その真似を宗実家元が50代でやったところでダメで、50代には50代の茶がある、真剣に取り組むかどうかに尽きるという指摘。 林屋さんから事に触れて「知識でわかったら終わり。それ以上深くものをみない。また更に深くまで追いかけない」とのコメントがあったそうで、これは自分にも言い聞かせたい。 「これからの茶の湯を考えるとき、資力や知識のハードルが高い数寄が流行するとも考え難い。余裕のある女性中心に、流儀の茶がまだ主流であると思う。だが残念なことに、その先の見通しはおぼつかない。続く限りは、茶を楽しむまでである」とのことで、現代の金持ちの旦那衆が数寄の道に入ってきてくれればいいんだけど。結局は日本の衰退とともに茶も衰退していくのかもしれない。海外に可能性を、という考えを持つ人を理解できるが、そこにあるものははたして茶の湯なんだろうかな。 佃さんが茶の湯の話をできるのは茶の湯の情報量からわかるけど、林屋さんが煎茶系の話にもついていけているのさすがだなと思ってたんだけど、結構煎茶席の経験もあるっぽかった。
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