![夏目漱石 講談社学術文庫](https://content.bookoff.co.jp/goodsimages/LL/001857/0018574111LL.jpg)
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 講談社 |
発売年月日 | 2015/12/01 |
JAN | 9784062923378 |
- 書籍
- 文庫
夏目漱石
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夏目漱石
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商品レビュー
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本書は漱石の初の本格的評伝だそうだが、著者の赤木桁平は漱石の門下生で、当時の花柳界を舞台にした小説を「遊蕩文学」と呼び、「読者の低劣なる興味に迎合」するものであるとして「遊蕩文学撲滅論」をぶち上げた人らしい。成る程と言うべきか、その堅物ぶりは本書でも発揮されており、例えば「門」を...
本書は漱石の初の本格的評伝だそうだが、著者の赤木桁平は漱石の門下生で、当時の花柳界を舞台にした小説を「遊蕩文学」と呼び、「読者の低劣なる興味に迎合」するものであるとして「遊蕩文学撲滅論」をぶち上げた人らしい。成る程と言うべきか、その堅物ぶりは本書でも発揮されており、例えば「門」を「それから」のエゴイズムの克服と位置付けるように、なんとしても師漱石を「人格主義者」に仕立て上げたいようだ。解説でも紹介されているが、漱石自身は著者に宛てた手紙の中で「書き方の割には中のほうが薄い」と苦言を呈しており、「誉めてくれるのは有難いが、君、ちょっとピントがずれてると思うがね・・・」というのが本音であったろう。文学を通じて人格の完成を目指した求道者という本書が提出した漱石像は、同じく漱石の門弟で大部の評伝を書いた小宮豊隆の「則天去私」とともに、長きに渉って漱石解釈を規定してきた。大正教養主義の空気を吸いこんだ門弟達が作り上げたこうした漱石神話は、のちに他者という観点を導入して近代小説としての漱石作品の意義を強調した若き江藤淳によって完膚なきまでに否定されたかに見える。「門」や「こころ」が描こうとしたのはエゴイズムの克服ではなく、むしろ愛の不可能性という人間の暗部であるというのが江藤以降の漱石論の主流だろう。勿論、漱石受容史の綿密な研究にとって、或いは漱石に関することなら何でも知りたいという漱石マニアにとって、本書が貴重な一冊であることは間違いない。
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