商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | みすず書房 |
発売年月日 | 2015/09/01 |
JAN | 9784622078876 |
- 書籍
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にもかかわらず 1900-1930
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20世紀初頭に「装飾と犯罪」という論文で波紋を起こした建築家アドルフ・ロースは、「ステータスを誇示するために装飾を必要するのは未開文明」と切り捨て、現代社会における装飾愛好趣味は無駄な労働を固定化させ、建築においては景観を汚し、日用品においては使い勝手を貶める犯罪である、と説いた...
20世紀初頭に「装飾と犯罪」という論文で波紋を起こした建築家アドルフ・ロースは、「ステータスを誇示するために装飾を必要するのは未開文明」と切り捨て、現代社会における装飾愛好趣味は無駄な労働を固定化させ、建築においては景観を汚し、日用品においては使い勝手を貶める犯罪である、と説いた。 賛否はあろうが、建築史的にはモダニズム建築の萌芽に位置づけられており、また社会学的には記号としての消費を批判したボードリヤールに続く系譜の源流、または情報を整理するという意味での「デザイン」という職能のはしりといっていいだろう。 ただ、本筋とはあまり関係のないところでおもしろかったのは反装飾の建築家ロースが、公共資源として都市菜園の可能性に言及し、その設計も行っていたことだ。音楽の都と呼ばれ、華やかなイメージのあるウィーンにおいても、1世紀前には都市菜園からの食糧自給が試みられていた。 p.195 「都市住民の一部が自発的にいそしむ仕事を公共のために役立てることが国家の義務だろう。シュレーバー菜園を見てほしい。ここでの都会人たちの農作業が大量の農作物を作りだしてきた。これらの食物は、彼らの自発的な作業がなければ国外からの輸入に頼らざるを得ないものだった。そして一九二〇年には、ウィーンのシュレーバー菜園所有者たちが生みだした食糧はじつに10億クローネにもおよんだのである。 労働意欲も労働力もあるのに、使われずに余った時間をぜひ農作業に充てたいという人々は、ウィーンなら数十万、オーストリア全土なら数百万はいる。「一日に仕事八時間、遊び八時間、休息八時間そして稼ぎは八シリング」。これはイギリスの労働組合の合言葉だ。八時間の「遊び」とくれば、わが国の労働者たちは喜んで畑仕事に精を出すだろう。そんなことで疲れ果ててエネルギーをとられると、本職に支障を来たして本末転倒だ、という非難はあたらない。畑仕事は、逆にわれわれを元気にしてくれる、最高の健康法だ」 アールヌーボーの文化が花開く二〇世紀初頭のヨーロッパにおいて、反装飾を説いたロースはへそまがりの偏屈だったろう。しかし、だからこそ産業革命によって引き起こされた労働者の疎外に対し、セーフティーネットとしての都市菜園を提案できたのかもしれない。 反装飾(によるドーピング消費)と半農半X的な思想は、常に歴史の中にオルタナティブとして存在してきた。決して主流になることはないかもしれないが、たとえマイノリティでもこれを許容し続ける社会であることは、ひとつの希望でもある。
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