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レイチェル・カーソンはこう考えた ちくまプリマー新書241
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 筑摩書房 |
発売年月日 | 2015/09/01 |
JAN | 9784480689450 |
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レイチェル・カーソンはこう考えた
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レイチェル・カーソンはこう考えた
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大学の同級生が総合商社に勤めていて海外からの農産物の輸入を担当していたとき、「遺伝子組み換え」について議論したことがある。 彼は「遺伝子組み換えを積極的に進めていくべき」派。彼の主張は次のとおり。 >現在、世界中の人口分の食糧をまかなえる農産物が絶対的に不足してるって知ってる?...
大学の同級生が総合商社に勤めていて海外からの農産物の輸入を担当していたとき、「遺伝子組み換え」について議論したことがある。 彼は「遺伝子組み換えを積極的に進めていくべき」派。彼の主張は次のとおり。 >現在、世界中の人口分の食糧をまかなえる農産物が絶対的に不足してるって知ってる? >害虫被害や天候不順がさらに追い打ちをかけて農産物の安定的な供給が喫緊の課題になっているなかで、遺伝子組み換え農産物が問題を解決しようとするのに何が悪いの? >害虫と天候不順で農産物が十分まかなえず人類が食料危機に陥るのと、新技術として不安の声もあるけど思い切って遺伝子組み換え食品を推し進めるのと両方を考えてみてよ。 >いまの世界の情勢を考えたら、農作物の生産不安をかかえているのに遺伝子組み換え農産物の推進へ舵を切らず現状維持で食糧危機に怯えたままの状況のほうが、リスクとしては高いんじゃないの? 一方の私は、遺伝子組み換えが後の世代へもたらす影響が十分に検証されていないことから漠然とした不安があるとして反対を表明したが、彼の「後の世代の問題もあるけど、大事なのはいま差し迫った食糧危機の回避の問題!」と言われ、返答に窮してしまった。 彼との議論までに、レイチェル・カーソンを読んでいなかったことを後悔。 もしタイムマシンが存在して私が彼と議論した当時に戻れるのなら、この本の読後感を踏まえて、次の主張をするだろう。 >人類は人類単独ではなく、他の生物と共生し、そして人類と他のすべての生物とが相互的に補う形で「環境」がつくられ、私たちすべての生物は環境に依存して生きている。 >また、生物の誕生から悠久の時間を経て進化を遂げ奇跡的なバランスによって人類をはじめとしたすべての生物が生かされている。 >そもそも生物は長い時間をかけて環境に順応し、時に発生した災害や異常に対しても、自然界が持つ精妙な装置によって結果的に順応してきた。 >その順応力を超えることを人類が自然界に対してしてしまうと、精妙な装置は壊れ、自然界はバランスを崩し、長い目で見ると不可逆的なダメージがもたらされることになる。 >だから目先だけでなく、ずっと先の世代まで安全だと保障されていない遺伝子組み換えはすべきではない。 >そもそも「ずっと先の世代まで大丈夫」と言えるだけの英知を、まだ人類は持ちえていないのだということを自覚し、自然界(=環境)に対してもっと謙虚であるべき。 カーソンさんが「沈黙の春」を出版したのは1962年。 この本が出版されたのは2015年。 だからこの本には、人類が科学技術を過信し原子力発電所を暴走させることになった2011年のあの出来事にも言及されている。 また、どちらかと言うと学術論文的な「沈黙の春」に対し、この本はまず文章が平易で一文一文が短くて読みやすい。 それに、カーソンさんが小さい頃に自然に興味をもつようになったきっかけから環境への関心への広がりまでの展開や、先に書いた原発問題などの現代的な課題が盛り込まれるなど総合的な構成がなされ、環境問題に関心を持ち始めた中学生や高校生にも勧められる。
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著者は、生態系や環境問題を専門とする農学博士。既にレイチェル・カーソン女史に関する複数の著作を持ち、本書もそれらの内容がベースとなっている。 レイチェル・カーソン女史は、米雑誌「TIME」が1999年に発表した、20世紀に最も影響力のあった「偉大な知性」20組/24人の中に、ライ...
著者は、生態系や環境問題を専門とする農学博士。既にレイチェル・カーソン女史に関する複数の著作を持ち、本書もそれらの内容がベースとなっている。 レイチェル・カーソン女史は、米雑誌「TIME」が1999年に発表した、20世紀に最も影響力のあった「偉大な知性」20組/24人の中に、ライト兄弟、アインシュタイン、天文学者ハッブル、DNAの二重らせんモデルのワトソンとクリックらとともに選ばれ、世界で初めて環境問題に目を向けさせたその思想は、人類の歴史を変えたものと言われる。 本書では、「海の三部作」と呼ばれる『潮風の下で』、『われらをめぐる海』、『海辺』と、環境問題を取り上げた『沈黙の春』、カーソン氏の死後、友人たちによって出版された『センス・オブ・ワンダー』を通して、カーソン氏が「未来の世代」に受け継いで欲しいと考えたことが纏められている。 具体的には、1.「海の三部作」で「無限の鎖」や「生命の織物」と考え、「美と神秘の世界」を見出したという「生命の多様性」について、2.『沈黙の春』で取り上げた、化学物質の「おそるべき力」と生態系や人間に及ぼす悪影響について、3.「センス・オブ・ワンダー」の感性と「環境と生命」の思想について、4.「環境と生命」のつながりや関係に係る倫理について、5.人類が選択するべき「べつの道」について、が述べられている。 「「環境と生命」の思想」では、未来に語り継ぐべきカーソン氏の思想として、(1)自然や生命の神秘さや不思議さに目をみはる感性(Sense of Wonder)、(2)生命に対する畏敬の念(Sense of Reverence)、(3)自然との関係において信念をもって生きる力(Sense of Empowerment)、(4)科学的な洞察(Sense of Science)、(5)環境破壊に対する危機意識(Sense of Urgency)、(6)自主的な判断(Sense of Decision)という6つのセンスが語られ、それらが総合的に働き、内から発せられる行動、更には「等身大の生き方」につながると述べている。 そして、「べつの道」では、「私たちは、いまや分れ道にいる。だが、・・・いまさら迷うまでもない。長いあいだ旅をしてきた道は、すばらしい高速道路で、すごいスピードに酔うこともできるが、私たちはだまされているのだ。その行きつく先は、禍いであり破滅だ。もう一つの道は、あまり《人も行かない》が、この分れ道を行くときにこそ、私たちの住んでいるこの地球の安全を守れる、最後の、唯一のチャンスがあるといえよう」(カーソン)と結ばれている。 「どちらの分れ道を行くのか?」というカーソン氏が半世紀前に発したメッセージに対し、今こそ我々人類は答えを出さなくてはいけない。 カーソン氏の足跡、思想がコンパクトにまとめられた良書である。 (2015年9月了)
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中高生に伝えるには文体がこなれておらず、全体として読みにくいのが残念だと思った(カバーもすてきなのに、ほんとうにもったいない)。これを時間をかけて読むよりも『沈黙の春』(実は未読)を直接読んだほうがいいような気もする。 レイチェル・カーソンの問題提起に端を発する環境への問題意識を...
中高生に伝えるには文体がこなれておらず、全体として読みにくいのが残念だと思った(カバーもすてきなのに、ほんとうにもったいない)。これを時間をかけて読むよりも『沈黙の春』(実は未読)を直接読んだほうがいいような気もする。 レイチェル・カーソンの問題提起に端を発する環境への問題意識を次々とりあげ啓発する内容で、インパクトのある知識(たとえば、地球上の水の量のうち淡水として再利用可能な水はほんのわずかな割合にすぎないこと)も散見されたが、図表の多くはあまり明快・科学的ではなく情緒に流されがちな印象を受けた。評伝をふくらませたような構成にして、生態学や環境倫理のアイデアを淡々と記述したらもっとおもしろかったかも… 中学生の娘にもぜひ読んでもらいたいテーマなのに、手にとっても読み通してもらえそうになくほんとうに惜しい。
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