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玉の井という街があった ちくま文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 筑摩書房 |
発売年月日 | 2015/07/10 |
JAN | 9784480432810 |
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玉の井という街があった
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商品レビュー
4.3
4件のお客様レビュー
ずっと東武伊勢崎線沿線に住んでいる。あ、今はスカイツリーラインなんて 恥ずかしい路線名になっているけど、わたしゃ未だに「伊勢崎線」と呼んで いるのでこのままにしておく。 小学校高学年ともなれば友達同士、子供だけで出かけることも増えた。 例えば浅草花やしきであったり、上野...
ずっと東武伊勢崎線沿線に住んでいる。あ、今はスカイツリーラインなんて 恥ずかしい路線名になっているけど、わたしゃ未だに「伊勢崎線」と呼んで いるのでこのままにしておく。 小学校高学年ともなれば友達同士、子供だけで出かけることも増えた。 例えば浅草花やしきであったり、上野動物園であったり、向島百貨園で あったり。 どこへ行こうが干渉しない父だったが、ここだけは子供だけで降りては いけないと言われていた駅があった。それが「玉ノ井」駅である。 何故だか分からなかったが言いつけは守った。高校生になって荷風さん の『濹東綺譚』を読んでその謎が解けた。 私娼窟の街だった玉の井。私が子供の頃には既に娼家はなくなっていた のだが、下町で育った父には昔の印象が残っていたのかもしれない。 勿論、父自身も私娼窟であった玉の井を知っていた訳ではないのだが。 公娼として営業を許可されていた吉原と違って玉の井には公の記録が 残っていないらしい。そんな玉の井が私娼窟として繁栄した頃を知って いる著者が、自身の体験と取材を元に書かれた街の記憶が本書だ。 荷風さんが苦界の女性を愛したように、玉の井に対する愛情がひしひし と伝わって来る。玉の井を訪れた時の記憶を元に書かれた街の風景の 描写は映像として再生できるほどに鮮明だ。 荷風さんをはじめ、戦前の玉の井には多くの文人が足を運んでいたの は知っていたが、そこに太宰治がいたことは知らなかったな。太宰に 関しては資料がほとんどないとか。惜しいね。この頃の太宰のことが 分かればいいのに。 春をひさぐ。女性最古の商売は戦後の売春防止法によって禁止された。 そして、玉の井の街からも女性たちが姿を消して行った。 取材中、路地の多い玉の井で道に迷った著者は通りすがりのふたりの 老婆に表通りまで案内してもらう。「玉の井もずいぶん大きな街になり ましたね」と呟いた著者に、老婆のひとりが答える。 「まったくその通り。玉の井の街がこれだけ大きくなったのも、みんな あの女たちのお陰です。女がいなけりゃ街は繁昌しませんよ。それを 今になって放り出してしまうなんて、義理を知っていたらもう少し何とか やり方があったはずですよ」 フェミニストが聞いたら噴飯ものだろうが、女性が体を売ることで人が 訪れ、それに伴って街が発展することもあるんだよな。 昭和の終わりごろ、東備伊勢崎線の駅名に残っていた「玉ノ井」も 「東向島」なんて味もそっけもない名称に変わった。かろうじて駅名の 表示板に「旧玉ノ井」と残るだけになった。 赤線なんて言葉も若い世代には通じなくなっている。でも、そこで生きた 多くの女性たちがいたことを記憶に留めておきたいね。
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戦前の私娼窟・玉の井を描いた随筆集。永井荷風の文学では詩的に美しく演出されているが、実態はなかなかどうして大変なものだったようだ。しかし、著者の記憶違いも多いらしく、後発の本では指摘されていた。 上品かつ高尚な風俗レポのような衝撃の一冊。著者は明治生まれのブン屋さん。荷風や太宰...
戦前の私娼窟・玉の井を描いた随筆集。永井荷風の文学では詩的に美しく演出されているが、実態はなかなかどうして大変なものだったようだ。しかし、著者の記憶違いも多いらしく、後発の本では指摘されていた。 上品かつ高尚な風俗レポのような衝撃の一冊。著者は明治生まれのブン屋さん。荷風や太宰も彷徨した私娼街・玉の井。荷風の「濹東綺譚」で一躍注目を集めるようになった。しかし本書を読むと濹東綺譚はファンタジーというか古き良き時代の文学的遺産に過ぎないのだなあというくらい生々しい描写が多い。花柳病をもらった作家の治療法などは読んでいて気が滅入るほどだ。若き太宰が濹東に出入りしていた際喜劇役者のエノケンに役者としてスカウトされたというエピソードもある。体を張って生き抜いた女たちの人生を思うと鎮魂の思いが深まるのだった
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本書が書かれた昭和50年代にすでに跡形もなかったということなので、現在その名残を求めても、ほんのわずかにその装飾(模様のようなもの)を残す家屋があるばかりだ。独特の臭いがあったという雰囲気など、想像の域を出ない。その意味では、同時代を生きた著者によるリアルな記載は大変貴重なものだ...
本書が書かれた昭和50年代にすでに跡形もなかったということなので、現在その名残を求めても、ほんのわずかにその装飾(模様のようなもの)を残す家屋があるばかりだ。独特の臭いがあったという雰囲気など、想像の域を出ない。その意味では、同時代を生きた著者によるリアルな記載は大変貴重なものだと思う。
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