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この国の空 新潮文庫
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この国の空 新潮文庫

高井有一(著者)

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この国の空 新潮文庫

605

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 新潮社
発売年月日 2015/04/01
JAN 9784101374130

この国の空

¥605

商品レビュー

3.8

12件のお客様レビュー

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2023/12/30

読み始め一見ありきたりな戦争文学だと思ったが、静かで丁寧な筆致、主人公である少女のイノセントな感性に段々心を動かされた。 戦時下という特殊な環境でしか育まれないであろう妻子持ちの隣人市毛との関係、大人と子供で絶望的に乖離している孤独や恐怖、読みどころは沢山あり満足できた。 シー...

読み始め一見ありきたりな戦争文学だと思ったが、静かで丁寧な筆致、主人公である少女のイノセントな感性に段々心を動かされた。 戦時下という特殊な環境でしか育まれないであろう妻子持ちの隣人市毛との関係、大人と子供で絶望的に乖離している孤独や恐怖、読みどころは沢山あり満足できた。 シームレスに入る回想で少し迷子になるが、読後感も素晴らしい納得の谷崎賞受賞作。

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2022/07/05

夏に読むべき本。といいつつ、長谷川博己様信者なので映画のビジュアルから入った不純な動機で読み始めました。 戦争末期の物語というと悲惨さが際立つものが多いけれどこれは戦争末期をそれぞれの生き方で行き過ぎる人間模様を描いた小説だった。 妻子を疎開させたアラフォー男子の市毛、母子家庭...

夏に読むべき本。といいつつ、長谷川博己様信者なので映画のビジュアルから入った不純な動機で読み始めました。 戦争末期の物語というと悲惨さが際立つものが多いけれどこれは戦争末期をそれぞれの生き方で行き過ぎる人間模様を描いた小説だった。 妻子を疎開させたアラフォー男子の市毛、母子家庭となり伯母と母の仲を取り持ちつつ生きる里子。裏表紙のあらすじにもある通り二人が通じあっちゃうわけなんだけれど、 それがメインの不倫メロドラマというわけでもなく、ただ、昭和の男女関係という雰囲気は漂う。勝手ともいえず一途でもない。戦時下という特殊な状況でそれでも人の生きる力はすごい。 この関係の捉え方が二人とも全然違って面白かった。 当時の男性にとっての37才と女性にとっての19才は今とはずいぶん違うんだろうな。 里子のこれからが気になった。余韻の残る本だった。

Posted by ブクログ

2022/01/23

太平洋戦争末期の東京・杉並に暮らす19歳の里子の日常が、淡々と粛々と綴られる。すっかり最近(……というのは少なくとも平成)の作品かと思っていたんだけど、読むのも終盤になってから1983年に発表された作品だったことを知った。それがわかると何となく、小説らしい小説だなと思いながら読ん...

太平洋戦争末期の東京・杉並に暮らす19歳の里子の日常が、淡々と粛々と綴られる。すっかり最近(……というのは少なくとも平成)の作品かと思っていたんだけど、読むのも終盤になってから1983年に発表された作品だったことを知った。それがわかると何となく、小説らしい小説だなと思いながら読んでいたのの裏づけがとれたような気がする。 「小説らしい小説」とは、三人称で書かれていること、情景や心情の描写が多く占めること、「 」(会話)が延々と続くことがないことといったところだろうか。悪く言い換えれば古くさい小説ということになってしまうだろうけど、きちんと練られたストーリーと書きぶりに、淡々・粛々としていながらあきたり退屈することなく、むしろすうっと物語の世界に誘われる。 常々思っていることだが、戦時中でも笑顔はあったし愛も恋も憎しみも羨みもあったはず。とかく最近は、戦時下の人々が時局や軍部の言うがままにされるばかりの清廉で善良な被害者のように描かれがちな気がするけど、そんなこともなかったはず。 と思っていながらも、この小説に出てくる主だった人たちの、ある意味でのみにくさ、ずるさは印象的だった。里子の伯母はもちろんのこと母親も互いにいがみ合うようなみにくさを見せるし、面倒を里子に押し付けているかのような言動がある。里子がひかれる隣家の市毛にしたって、ずいぶん勝手な人物だ。里子だって悶々としたあげく自ら市毛に挑んでいくような大胆さをもつ人物で、市毛にトマトを食べさせるくだりや伝えられた日に帰宅しない市毛を追って彼の職場に電話をかけるところとか恐ろしい。 でも、みにくさと前述したけれど、いってみればたくましさでもある。そんなたくましさをちょこちょこ用いながら戦時下の不自由な毎日を渡っているともいえるんじゃないだろうか。そして物語は1945年8月10日を過ぎたところで終わるけど、まもなく控えている戦後のほうがより過酷な時代のはずで、そこを生き抜くときにもまた、このみにくさ、たくましさが役立つのだろう。 そしてけっして、みんなみにくさとずるさばかりの人々ではない。正直で誠実で善良でお人好しなときもある。そういう両面が描かれることで、人物の厚みが感じられフィクションである小説としての現実感が担保される。上質な小説を読んだ読後感が得られる。 作中で描かれる戦時下の不自由な生活。いろんな物事が制限されたり、お上でもない市井の人の間で自粛を強要するようなことがあったりする感じが、昨今のコロナ下と似ている感じ。

Posted by ブクログ

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