商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | KADOKAWA |
発売年月日 | 2013/09/25 |
JAN | 9784041008256 |
- 書籍
- 文庫
グランド・ミステリー 新装版
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グランド・ミステリー 新装版
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商品レビュー
3.6
14件のお客様レビュー
入り組んだ構造で、くらくら目眩がするような小節。 一度読んだだけではよくわからないところもあるが、面白くて一気読み。
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奥泉光『グランド・ミステリー』読了。 感想、レビューが非常に難しい。初めてその手の記録を一切残さないという選択肢も頭を過ぎった程だった。 しかしそれは否定的な意味ではなく、内容があまりに語り切れないからだ。 いろんな事情があって約半年かけて読了した950ページの大作なのだが、半...
奥泉光『グランド・ミステリー』読了。 感想、レビューが非常に難しい。初めてその手の記録を一切残さないという選択肢も頭を過ぎった程だった。 しかしそれは否定的な意味ではなく、内容があまりに語り切れないからだ。 いろんな事情があって約半年かけて読了した950ページの大作なのだが、半年も携帯し続けたので喪失感は大きい。読みにくいところも多いし、とにかく内容が眩暈のするような構造で、酩酊と混沌の世界だったのだが、それでも僕はこれを望んでいた。こういう小説を読みたかった、と最後には思える。 解説の大森望を引用する。 どのような小説であるかについては、たぶん読者によって無数の見方がある。たとえば……。 日本海軍の潜水艦と空母を舞台に、不可能状況での毒死事件と「盗まれた手紙」事件を扱う歴史ミステリ。 迫真のリアリティで一個人の視点から太平洋戦争の裏面を活写する大岡昇平ばりの戦記文学。 戦争論と日本論を徹底的に突き詰める思想小説。 スティーブ・エリクソンの向こうを張る、魔術的リアリズムを駆使した現代文学。 謎の武器商人や怪しい予言者や謎めいた研究所が登場する、一大通俗伝奇ロマン。 戦時中の文学サロンに集う浮世離れした人々の人間模様を描く恋愛小説。 戦争のどさくさにまぎれてのし上がっていく天才的実業家と、汚れ仕事を一定に引き受ける忠実な部下とのコンビを軸にした痛快ピカレスク。 ふたつの現実を巧妙に重ね合わせる歴史改変SF……。 (中略) 本格ミステリーのモチーフと戦記文学の背景とSFの設定を借り、現代文学の方法論を使って書かれた一大エンターテインメント 本当に驚くべきことだが、この表現が全て合致する。そんなことがあるだろうか、それで物語になるのだろうか、これが一冊の小説になっていること自体が離れ業すぎる。京極夏彦を初めて読んだ時に受けた衝撃に近い。天才と認めざるを得ない作者だ。 人物描写が巧みで、クスリとさせるような愉快な人物も何人か登場する。会話も面白い、主義主張がまた考えさせられる。だがそんな人物描写も構造の歪みに呑み込まれていく。 あらゆる謎は解決を唯一の帰結とせずに歪んだ時空と構造に呑まれ、世界が徐々に捻れ、大きな畝りとなって最後には凪が訪れる。 この衝撃と神秘的とも言える読後感は何度か経験している。 『匣の中の失楽』『匣の中』『奇偶』『眩暈を愛して夢を見よ』『修羅の終わり』など。中でもおそらく一番近い読後感は『匣の中の失楽』『奇偶』『眩暈を愛して夢を見よ』あたりだろうか。ちなみにこれらは僕のオールタイムベスト上位作品だ。すなわち、本作もまたそこに名を連ねることになる。 同時にこれらは僕の中で「奇書」という分類をしている作品だ。では本作は奇書か? これは非常に悩んだ。 暫定的に奇書の定義を「構造的な酩酊感」「衒学趣味」「オカルト的不気味さ」「アンチミステリ」の4つを満たす、あるいは限りなく近い条件を満たす、あるいはいずれかを極端に満たすもの。というような形で選定していたのだが、本作はこれらを満たしている。しかし、奇書と言えるのかいまいち判断がつかない。 混沌さが故にこれらを満たしてしまったという感が否めないが、いずれせよ満たしている以上奇書であるとは思う。しかし奇書であると同時に、それを超える大きな枠組みを全て飲み込んでいる気がしてならない。 ある意味、奇書を超える奇書に成り得るのはこういう作品なのかもしれない。
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「グランドミステリー」は、僕がはじめて読んだ奥泉作品だ。相当前に読んだもので、ストーリー云々はまるで記憶になかったが、時間を迷宮的に超越した、軍艦とベニスと加多瀬と志津子の物語、というふうに記憶していた。 実に何年振りか(何十年ぶり?)かの再読だったが、記憶していた以上に辛辣な日...
「グランドミステリー」は、僕がはじめて読んだ奥泉作品だ。相当前に読んだもので、ストーリー云々はまるで記憶になかったが、時間を迷宮的に超越した、軍艦とベニスと加多瀬と志津子の物語、というふうに記憶していた。 実に何年振りか(何十年ぶり?)かの再読だったが、記憶していた以上に辛辣な日本、日本人への批評的文学だったように思えた。ただしそこは奥泉さんなので、あくまでもエンターテイメント要素が前面に押し出され、むしろそちら方面に傾きすぎて重心が散らばってしまっているところが本作の弱点でもあるように感じた。夕鶴事件の真相、と銘打たれてスタートした物語だが、結局のところその真相などはたいした真相ではなく、手紙の紛失事件もその真相はたいした真相ではなく、川崎整備兵の失踪もまたたいした真相ではなかった。重心の散逸は、もしかしたらわざとなのかもしれないが、奥泉さんの小説を常に蝕んでいる。どた馬、豆だいふく、貧乏神などのエピソードに見られる悪ふざけも気に入らない。 でも、それでもなおかつ魅了されてしまうのが奥泉さんの凄いところだ。なにを置いても絶賛されるべきは圧倒的なその表現力、描写力、文章力だ。ほぼすべての文に感嘆してしまう。連続ドラマの終わり方のような、章の締めくくりの一文も素敵だ。そして毎度の迷宮感。僕が奥泉さんの小説を読むのは、この迷宮感を味わいたいからに他ならない。グランドミステリーは、その名の通り、ミステリーチックな迷宮感を味わうには最適な作品です。 今回文庫版を読んだのですが、ラストシーンが記憶と違っていました。単行本と変えてますか??それともただの記憶違いかな。
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