商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 2013/07/19 |
JAN | 9784003570012 |
- 書籍
- 文庫
黄金の驢馬
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黄金の驢馬
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「唯一完全な形で伝わるローマ時代のラテン語小説」。 著者、アープレーイユスは2世紀に活躍したローマの弁論作家。弁論作家って何?という感じだけれども、奇想天外な小説や極端に技巧的な弁論文で名声を博したんだそうである。 このアープレーイユス、旅の途中に病気になったことがある。友人の母...
「唯一完全な形で伝わるローマ時代のラテン語小説」。 著者、アープレーイユスは2世紀に活躍したローマの弁論作家。弁論作家って何?という感じだけれども、奇想天外な小説や極端に技巧的な弁論文で名声を博したんだそうである。 このアープレーイユス、旅の途中に病気になったことがある。友人の母である未亡人が熱心に看病してくれ、その縁で2人は結婚する。ところが、その未亡人が裕福であったことから、未亡人の親族から魔術を使って誑かしたと訴えられてしまう。が、彼は見事に自己弁護し、無事無罪を勝ち取ったというから、まぁ口の達者な、もとい、弁舌爽やかな人物であったのだろう。 本作はアープレーイユスの代表作とされる。 大きな話の流れとしては、所用で旅に出かけたルキウスという青年が、魔術に夢中になり、魔女を見習って梟に化けようとする。ところが飛んだ手違いで驢馬(ロバ)になってしまい、人にこき使われて艱難辛苦いかばかり、最後はイシスの秘術により、元の姿に戻ってめでたしめでたし、というもの。 ここに、ルキウスが見聞きしたり、出会った人々が語ったりという形で、数々の挿話が差しはさまれる。一種の枠物語である。 この中で一番有名なものが、「クピードー(キューピッド、エロス)とプシューケーの物語」。ある王国の3番目の姫君プシューケーは大層美しく、人々はウェヌス(ヴィーナス、クピードーの母)よりも美しいともてはやす。これに怒ったウェヌスは、息子のクピードーに、その矢でプシューケーが世の中で一番みじめな男と恋に落ちるようにしてくれ、と命じる。ご存知の通り、クピードーの矢に射抜かれたものは、その後で見かけた人物に恋をしてしまうんだな。ところが、クピードーは実は、自身がプシューケーに恋をしてしまう。ご宣託でプシューケーは淋しい山の頂に放置され、誰とも知れぬものにさらわれる。さらわれた先は立派な御殿で、夜な夜な見知らぬ夫が通ってくる。けれども彼は決して顔を見せない。しばらくして、プシューケーがどんな暮らしをしているか見に来た2人の姉は、その贅沢な暮らしぶりに嫉妬し、夫の顔を覗き見るようプシューケーを唆す。誘惑に逆らえなくなったプシューケーは、熟睡している夫の顔を蝋燭の灯で照らしてしまう。そこで彼女の見たものは・・・。その後も起伏のあるストーリーが続き、単体としても味わい深い。「愛(=クピードー)と心(=プシューケー、psychoの語源)」の物語である。 長年の積読を読もうと思ったのは、「クピードーとプシューケー」の原典を読もうと思ったからで、その部分はまぁおもしろかったのだが、他の挿話がそれほどおもしろかったわけではない。冒頭の、魔女が浮気男をとっちめる不思議な話あたりはまずまずだったのだが、何せ、艶聞めいた話が多く、浮気あり、少年性愛あり、獣姦まであり、といった具合で、いささかドン引きレベル。夫が面倒を見てやっている少女が夫の妹だというのも知らず、嫉妬のあまり殺してしまい、衆人環視の中、ロバと交わる罰を受けようとする女の話とか、どこをどう突っ込んでよいのかよくわからない。 伝奇小説であり、娯楽小説であり、ということなので、当時の風俗や、楽しまれていた物語がこんなものだったのか、というくらいの興味で読むのが正解だろうか。 よくわからないのは、最終的にルキウスを助けるのが、イシスの力であるというところ。イシスと言えばエジプトの女神ではないのか。途中で出てくるウェヌスにしろ、フォルトゥナ(運命の女神)にしろ、ギリシャ・ローマ系の神様だと思うのだが、アープレーイユスの頃のローマには、エジプト神話なども流れ込んでいたものか。 そのあたりもちょっと興味深いのかもしれない。 それはそうと、ルキウス君、もしも最初の目論見通りに無事に梟に変身していたら、驢馬になるよりよいことあったのかな?
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