商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 吉川弘文館 |
発売年月日 | 2012/11/26 |
JAN | 9784642029100 |
- 書籍
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中世王家の成立と院政
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中世王家の成立と院政
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頭に「女性史観点での」などと付けて欲しかった。また後ろには「の一様相」などと付けて欲しかった。(笑) この書名から想像していた内容とは少し異なり、制度史観点での論述が大半で、それは自分も興味があるので良いとして(笑)、何よりあたかもそのような制度の成立(あくまでも部分であるが)が...
頭に「女性史観点での」などと付けて欲しかった。また後ろには「の一様相」などと付けて欲しかった。(笑) この書名から想像していた内容とは少し異なり、制度史観点での論述が大半で、それは自分も興味があるので良いとして(笑)、何よりあたかもそのような制度の成立(あくまでも部分であるが)が王家や院政を成立たらしめたとする主客転倒的な論考が気になった。 第一部の後院領の形成とその行く末に関する論文はそのような視点に新味を感じ興味深かった。だが、後院という天皇領が、摂関期においては摂関が管理していたのが、院政期には王家の家長たる治天の管領下に置かれるというのは、ある意味当然の成り行きと思え、王家内の全体的な権力構造変化の一部を成しているに過ぎないのではないかとも思える。 また、幼帝の母后が女院となり父院と同居することになった場合、輿に同乗するなど公式行事で幼帝をサポートし母后の代理となる准母立后制の論述も、新味でこれもとても興味深かったのだが、これも結語によれば准母立后の意味はそれに留まらず、これにより皇統の正統性をも明示したということであるが、父院とは別面からのサポートの一環とまでは首肯できるものの、皇統の正統性の明示という解釈にはかなりの飛躍を感じる。それなりの地位を与えた上で幼帝をサポートする女性を側に置くというのは、治天の配慮としては至極当然な対応であり、ある意味当然な結果論ではとも思える。 篤子内親王論については、自分も学生時代に八条院を中心とした女院領のレポートを書いたことを思い出し、別の意味で懐かしいものがあった。(笑) 第二部は院宮家の家産機構についての論考群であり、諸所の所始、政所の庁始と吉書、所宛についての制度の実態を解明したものであるが、単調な制度史に興味がない者には退屈かもしれないが(笑)、自分にはなかなか面白いものであった。特に吉書の起こりと請印を受けずに有名無実化する過程を、封戸から荘園への経済基盤転換とした論考は興味深かった。 そして、第三部は本書の骨子である中世王家と院政についての論考となる。第一章は建春門院滋子と建礼門院徳子の国母としての政治的位置付けを論じたものであるが、これも結局は初期院政期と平家政権が絡み合った特異な状況下での個別事例のように思えたがいかがなものであろうか。そして、第二章において王家の二重概念として、一組の夫婦関係(父院+国母)を前提にして嫡系継承を指向する院の「家」たる「王家」と、それを包含する氏としての王家(王氏)の複合構造の理論を提示し、分裂含みではあったもののたまたま収束し得たため、後の両統迭立のようにならなかったとするのだが、こうした複合構造の説明については納得するものの、しかし、こうしたことは「家」という概念を持ち出すまでもなく、前代においても後代においても、特に「院政」に限らず「王」の息子たる兄弟が存在する限り不断に立ち現れるものだと理解するのだが、これもいかがなものであろうか。 また、国母や新院が、院政の一翼を担う、もしくは代理可能な存在という見解は興味深いものであるが、しかしやはりそれは専制的な治天がいてこその一翼であり代理であるようにも思える。さらに、そうした補完があってこそより専制性を強化できるともいえる。 総じて、王「家」の成立が「院政」という政治形態の発生と深化にどのように歴史的に関連し評価し得るのか(もしくはその逆の)をむしろ知りたいと思っていたのだったが、個別事例(女院や家産機構など)の論考や、「家」概念を脱却せず国家論にまで昇華しないままの結語だったような気がして自分には少し残念な感じだった。そんなわけもあってか、論文そのものよりも論文発表後に出された反論等に応える形で記された付記の方が刺激的だったように思う。(笑) あとがきにて著者の苦労が偲ばれてぐっときたので、星マークは少し甘めにしてしまった・・・。(笑)
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