実践入門 解離の心理療法 初回面接からフォローアップまで

細澤仁【著】

• 販売会社／発売会社: 岩崎学術出版社
• 発売年月日: 2012/07/01
• JAN: 9784753310470

商品レビュー

2018/10/21

精神分析的心理療法家に対して、
僕は、本当に尊敬の念がやまない。
この本は、治療者が患者の前ではいかに無力であるのかが、
ひたすら書いてあるようにすら読める。
しかし、大切なことは、無力で、為す術もない、その状況においても、ただそばにいるということ。そして、逃げ出したくなるようなその空気に耐えること。その関係性の中で生み出されてくるものに、丁寧に向き合うこと。
ブリーフセラピーや認知行動療法など短期解決を目指す心理療法がスタンダードになっている一方で、５年も１０年も、ひたすら終結することのない治療関係が、延々と続くのである。人間同士の出会いと別れそのものである。

治療者にとって、最も大切なこと。
それは根性であると、筆者は言い切る。
「んなアホなっ！」
と突っ込みを入れたくなる気持ちがある一方で、
精神分析的心理療法という、こんなにも真摯な治療方法を行える治療家たちがまだいるということに、感銘を受ける。

2013/04/24

解離の背景には、愛情希求をネグレクトした母親の養育態度と、それを搾取した父親がある。心理療法家が患者の転移を解釈するということは、解釈を持って患者のこころに侵入するということで、それは愛情希求を搾取した父親と重なり、解釈しなければネグレクトした母親と重なる。結局セラピーは行き詰まる。その時、セラピストにできることは患者のそばにいることくらいである。セラピストに必要な資質とは、ある程度の臨床センスとど根性である。