商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 吉川弘文館 |
発売年月日 | 2011/12/14 |
JAN | 9784642029056 |
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豊臣政権の支配秩序と朝廷
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豊臣政権の支配秩序と朝廷
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國學院大學文学部史学科教授。 ※國學院大學図書館 https://opac.kokugakuin.ac.jp/webopac/BB01508890
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史上初めての「武家関白」羽柴秀吉が行った、朝廷官位利用による家格秩序の再構築・編成について論じた論文集。 自分も『公卿補任』を眺めていることが好きだった頃があって(笑)、特に秀吉政権期は面白く興味深かったが、本書では同時代性の高い「御湯殿上日記」や公家日記などを中心に抽出した官職...
史上初めての「武家関白」羽柴秀吉が行った、朝廷官位利用による家格秩序の再構築・編成について論じた論文集。 自分も『公卿補任』を眺めていることが好きだった頃があって(笑)、特に秀吉政権期は面白く興味深かったが、本書では同時代性の高い「御湯殿上日記」や公家日記などを中心に抽出した官職を素材にしていて対比の面でもなかなか面白かった。 秀吉と天皇・公家との交流を中心に論じた第一部では、秀吉が朝廷との交流を親密化させていく様とその政治的思惑を描く。秀吉初参内は、織田信雄や足利義昭の官位を超えた正二位・内大臣となった時点で実現したという論証は面白い。だが、天皇→秀吉、秀吉→天皇のやり取りの説明は少し迂遠な感じで、特に第二章の「勅使」と「御使」の違いの論証は著者も最後に触れているように勅書の内容が早道なのではないかと思った。また、天皇による私的使節派遣が秀吉政権基盤の整備につれて公的使節重視に変更されていくという道筋は、有力大名衆への私的使節派遣への相対的格差となる半面、そのような天皇-大名交流がプチ「秀吉」の再生産を胚胎し秀吉がそれを許すのかという疑問が残り、さらなる論理付けが必要なように思われる。「豊臣伝奏」の成立として、菊亭・観修寺・中山・久我ら様々な公家の家格層から固定化していく話は興味深いが、秀吉が公家と武家を集めた催しなどを通じて、公家内部と武家の家格差を可視的に変更し、身分秩序を再構築していく政治的思惑の論説は大変に面白く、それら再構築構想に携わったであろう菊亭晴季をはじめとする伝奏や聖護院道澄らの政治的動きを次回は掘り下げてもらいたい。 第二部は主にそうした公家身分秩序の操作を経て誕生した「清華成大名」について考察する。秀吉政権が大名をはじめ家臣らに豊臣姓と羽柴名字を疑似家門として授与するのと同時に、朝廷官位を与えることで、「清華成」「諸大夫成」など武家家格体系を整備したとする。当初の清華成大名は、織田信雄・徳川家康・羽柴秀長・羽柴秀次・宇喜多秀家で、上杉景勝・毛利輝元が加えられ、そして前田利家、小早川隆景が列せられたとする。後の「五大老」とされるメンバーにより構成されている点と時期による序列移動、織田秀信のように中納言であるにもかかわらず含まれない点などは興味深い。「清華成」の目的は旧戦国大名「公儀」の集合化による豊臣「公儀」の成立と、内大臣にまで到達する徳川家康の集団への埋没政策とするが、どちらも論証不足の感は否めない。また、将軍任官以前、徳川家康による羽柴秀頼への挨拶は、「武家清華」と「武家摂関」という家格差のためという説明だが、あまりにも朝廷官位を前提とする家格を過大評価しすぎている気がする。そもそも領地安堵や転封、軍役賦課は官位的家格秩序によるものでなく、封建的主従関係が基本にあると思われ、家格身分はそうした前提として成り立つ政権安定秩序に過ぎないのではないだろうか?(いかに家康が「公儀」と認識されようとも、微妙な時期とはいえ豊臣への臣従を離脱したわけではあるまい)対後北条氏などへの権威差の見せつけや政権内部の秩序統制が目的の「出来合い」の朝廷官位利用と、命令の強制化を伴う権力秩序を混同してはいけない。 「布衣」についての考察は、豊臣政権におけるそれと徳川期・室町期以前の違いを論証したものであるが、鎌倉時代にまで遡っての制度的変遷の研究でとても興味深かった。 中近世における朝廷官位を通じた秩序構成の研究は現在盛んとのことですが、自分もとても興味がある分野ですので、次回作を期待します。
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