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怪優伝 三國連太郎・死ぬまで演じつづけること
1,870円
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 講談社 |
発売年月日 | 2011/11/17 |
JAN | 9784062168137 |
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怪優伝
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商品レビュー
3.6
8件のお客様レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
先日亡くなった佐野真一(2022.9.26)が、亡くなる2年前の三国連太郎とのインタヴュウを交えた本作は、亡くなった後でも残された作品が生き生きと光を放つような力を感じられる。 特に三国が選んだ出演作10作を見ながら、作品だけでなく三国の人柄や考えの一端、共演した俳優たちの印象を引き出す丁々発止が小気味いい。 それには佐野の三国に関する資料をよく調査したうえでの取材力を感じさせるものだ。 特に戦争を忌避した三国の性格、心情、行動が興味深く描かれ、彼の演技に対する徹底した考え方に与えた影響の大きさを考えさせる。 また緒形拳が三国に三国が釣りバカシリーズに出ている理由を聞いたというエピソードは緒方と三国の役者としての緊張関係が伺えて大変興味深い。 三国の4度目の奥さんが佐藤浩市(3度目の妻の子)と三国の似た性格の一端を話すところも面白い。父と息子の関係の業の深さよ。
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2013年に90歳で亡くなった俳優・三國蓮太郎が自選した映画10本を、ともに観ながらインタビューを行ったという本である。 その10本というのは、掲載順に書くと「飢餓海峡」、「にっぽん泥棒物語」、「本日休診」、「ビルマの竪琴」、「異母兄弟」、「夜の鼓」、「襤褸の旗」、「復讐するは我...
2013年に90歳で亡くなった俳優・三國蓮太郎が自選した映画10本を、ともに観ながらインタビューを行ったという本である。 その10本というのは、掲載順に書くと「飢餓海峡」、「にっぽん泥棒物語」、「本日休診」、「ビルマの竪琴」、「異母兄弟」、「夜の鼓」、「襤褸の旗」、「復讐するは我にあり」、「利休」、「息子」である。 いずれも名作と呼ばれる作品ばかり。 それを出演者である三國蓮太郎と一緒に観ながらインタビューを行うのである。 なんと贅沢な話であろうか。 映画ファンからすれば、垂涎もの、うらやましいかぎりである。 しかし相手は底知れない快優・三國蓮太郎である。 生半可な対応は怪我の元、返り討ちに合いかねない。 だが対する佐野眞一も、一筋縄ではいかないライターである。 これまでにも甘粕正彦、正力松太郎、中内功、孫正義、小泉純一郎、石原慎太郎などといったカリスマたちを、俎上にあげてきたライターである。 一歩も引かずに踏み込んでゆく。 そのつばぜり合いはなかなかスリリング。 そこで語られる出生の秘密、戦争体験、若き日の放浪、女性遍歴、映画界での伝説的なエピソードの数々、そして息子・佐藤浩市のことなどが、時に赤裸々に、時にはぐらかしながら語られていく。 また時に笑いがあり、和やかな時間もあり、といったインタビューは変化に富んでいる。 そして当初の予想とは違って、素の三國蓮太郎はいたって穏やかで紳士的。 インタビューが進むにしたがって親密度が増してゆく。 かつては映画監督を目指したこともあるという佐野眞一の映画愛を、三國蓮太郎が正面から受け止めたからなのかもしれない。 ところでこれら10本の映画のうち「襤褸の旗」を除いた他の9本はすべて観ている。 なのでこの本を読んでいると彼らとともに映画をもういちど観返しているような気分になってくる。 中でも最初に取り上げられた「飢餓海峡」がもっとも印象に残っている。 それは著者・佐野眞一も同様で、特別の思い入れをもって書いている。 この映画が作られたのは1965年、東京オリンピックの翌年、高校3年生のときである。 圧倒的エネルギーを発散するこの映画を観た時の記憶は今も鮮やかに残っている。 これほどの衝撃を受けた映画はそれまでにはなかった。 以来何度も繰り返し観ているが、何度観ても新しい発見があり、感動がある。 けっして古びることがない。 昭和27年生まれで私より1歳年上の佐野眞一も、同じような衝撃を受けている。 それだけに佐野同様の思い入れをもってこの章を読むことになったのである。 ちなみにこの映画が作られた4年前の1961年、内田吐夢は中村錦之助主演で「宮本武蔵」を撮っている。 以後1年に1作づつ撮り、5年後の1951年、「飢餓海峡」と同じ年に5部作として完結させている。 この映画で三國蓮太郎は沢庵和尚を演じており、その存在感は強く印象に残っている。 ついでに書くと三國蓮太郎は1954年に作られた東宝映画「宮本武蔵」(監督・稲垣浩)にも出演、こちらでは本位田又八を演じている。 「宮本武蔵」という映画にとって、三國蓮太郎は欠かせない俳優ということになる。 このことだけでも三國蓮太郎が、いかに幅広い芸域をもった俳優かということがよく分かる。 「俳優とは?」という質問に対して、三國は「人に非ずして、優れた者」と答えている。 いかにも三國蓮太郎らしい答えである。 この本を読むことで、そこに込められた様々な思いの一端に触れることができたように思う。 またもういちど「飢餓海峡」が観たくなってきた。
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するすると読み終わりました。だから面白かったんですね。 どんな本かというと、以前に有線放送か何かの企画で、三國連太郎が自分の出演映画から10本選ぶ、というのがあったらしい。で、その10本について、あるいはその10本を話の入口にして、佐野眞一さんが三國連太郎さんにインタビューした...
するすると読み終わりました。だから面白かったんですね。 どんな本かというと、以前に有線放送か何かの企画で、三國連太郎が自分の出演映画から10本選ぶ、というのがあったらしい。で、その10本について、あるいはその10本を話の入口にして、佐野眞一さんが三國連太郎さんにインタビューした。そのインタビューそのものと、佐野眞一さんの三國連太郎についての考察やルポルタージュ的な記述。そういう本です。 とにかく、三國連太郎のインタビュー部分が、オモシロイ。 ぶっきらぼうだったり、役者や監督の批評をしたり、裏話、佐藤浩市について、緒形拳について、そして自分の無茶苦茶な人生について。オモシロイ。 良くは知らなかったけど、三國連太郎さんは、所謂被差別部落民だった祖父、そこから逃げるために流れ者的な電気工事夫だった父、そして何故か網元のお嬢さんだった母を持っている。 で、父と母もワケアリな関係で、後年大俳優になってから、母が死んだ後で、父から、「お前は俺の子じゃない」とか言われたりします。ほとんど笑うしかないような生い立ちです。 10代から不良で、家出、女遍歴、ほぼ最底辺労働者のような流れ者になり、徴兵から逃亡し、だが実母が官憲に告げ口し、連れ戻されて出兵。中国で死線をくぐって終戦。生きるために銃撃戦の中、肥溜めに一晩漬かっていたという。 中国の収容所でも生きるためにまず、民間人を偽装。夫婦連れの方が日本に帰りやすいと聞いて偽装結婚。そして帰国。その後も流れ者的な破滅人生を歩んでいて、26歳くらいで銀座の路上で松竹の社員にスカウトされて、映画界入り。この映画界入りの挿話は、本当かぁ?と思うんですけどね。あまりに出来すぎというか・・・何か絶対ウラがあるんじゃないかと思うんですが・・・。 で、映画界入りして以来、木下恵介、市川崑、稲垣浩、内田吐夢、山田洋次、小林正樹、今村昌平、勅使河原宏、山本薩夫、高倉健、渥美清、坂東妻三郎、高峰秀子、田中絹代、有馬稲子、伊藤雄之助、三船敏郎、淡島千景、岸恵子、勝新太郎・・・らと仕事。 そんな人々についての感想などもあり、そのへん、オモシロイ。 黒澤と小津は、ないんですね。そのへんについても語ってますが。 松竹入社から、五社協定時代に東宝に移籍。当時の芸能ジャーナリズムに叩かれた。 女遍歴も奔放で、太地喜和子との恋愛は当時大きな話題に。 30代でもう演技派の地位を作って、その後も商業主義的な作品にあまり出ず、ギャラの安い独立プロ系の作品も厭わず出演。 女性と別れるなどのきっかけで数度、文字通り裸一貫になったり、突然インドやら外国に全てを捨てて行ってしまったり。 一方で異常に俳優としての役作り、演技の深みにこだわり、負けず嫌いで、執念深い。 と、言うわけで日本映画史の見取り図や戦後日本史の全体像が分かる人には、するする面白く読めちゃう。多分、そうでもない人も、三國連太郎という異常な人に興味もてば引き込まれると思います。 その自選10作品について、という切り口で本は作られてるんですけど、佐野眞一さんが、それら映画について、こういう場面、とかって言葉で説明するんですね。その辺の文章が、さすが佐野眞一ですね、面白く読めます。観てなくても観たような気になるし、観てみようという気になりますね。 ただ、佐野眞一さんの本は何冊目かなんですが、まあ、コレはそんなに深い取材は要らない本だよな、という感じですね。映画業界の経済的な歴史やスタッフワークについての言葉とかは、やや、勉強が浅い(笑)。 あと、三國連太郎の生涯や仕事を、何かと戦後日本の精神史に関連づけていこうとする言葉も、別に要らないですね。そんなに、説得力ないですしね。 単純にハードボイルドに三國連太郎という役者の公私を見つめるだけで、テーマ性や社会性は読者が勝手に見出せばいいじゃん、と思いました。 佐野眞一さんの本って、なんだかんだ言って最大の美徳は娯楽的であることだと思うんですよね。ノンフィクションな分だけ余計に、ドラマチックに語る。単純に面白い。それから、やはりある全共闘世代的なインテリ左翼的方向に微妙に傾いた精神ですね。これはまあ、どっちにせよ完全中立とか有り得ないので、それはそれで僕は嫌いじゃないです。 ただ、この本は、評伝でもあるけどインタビュー本でもあるわけで、とにかく三國連太郎の言葉がオモシロイので、いっそ「ヒッチコック×トリュフォー」的な、インタビュー本、という形式でも良かったのでは、と思います。 正直、「あー三國連太郎さん死んだなー」と思っていたらジュンク堂で平積みされてたからフラっと買っただけで。本自体は2年くらい前の本なんで、見事に書店さんの誘導にハマった訳ですが、面白い本でした。
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