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フルトヴァングラー
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フルトヴァングラー
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「KAWADE夢ムック 別冊文藝」シリーズは、毎回同じフォーマットを使っているわけではないし、書き手も違うため、当たり外れの差が大きい。書き下ろしもあるが、様々な記事の寄せ集めで構成されているため、どの様な文章を載せるかによって、出来が全く違ってくる。本書は、当たりか外れか?結論...
「KAWADE夢ムック 別冊文藝」シリーズは、毎回同じフォーマットを使っているわけではないし、書き手も違うため、当たり外れの差が大きい。書き下ろしもあるが、様々な記事の寄せ集めで構成されているため、どの様な文章を載せるかによって、出来が全く違ってくる。本書は、当たりか外れか?結論から書くと、当たりであった。 フルトヴェングラーという半ば神格化され、特別扱いされた人物について書かれたためであろうが、皆思い入れが強く、総じて濃い内容であった。 複数の執筆者の文章や、対談を通して、フルトヴェングラーという人物を様々な角度から見ることができた。 私は、特にフルトヴェングラーファンというわけではないので、彼の音盤も30枚位しか持っていない。しかもそのうちの5枚は1951年のバイロイトの第九である。その内訳は、2021年末に出たBIS盤、同じ演奏のオルフェオ盤、EMIの足音入り2011年リマスター盤、1997年のARTリマスター盤、リマスター表記のない従来盤である。最後の盤は、EMIのベートーヴェン交響曲全集にも含まれているのと同じ音質である。この全集の内の一枚もカウントした場合には、バイロイトの第九は実に6枚も所有していることになる。 この様な偏ったライブラリーを形成しうるのは、フルトヴェングラーだけである。それだけ、ユニークな存在なのだ。 フルトヴェングラーの録音盤は全てモノラル録音で、純粋に音楽を楽しむのには向いていない。先に挙げたバイロイトの第九にしても、特にBIS盤は、音があまりにも貧しい。BIS盤は、オルフェオ盤が本番の演奏で、EMI盤はリハーサルだということがわかる資料としての価値はあるが、それは音楽を楽しむのとは別の次元の話だ。 BIS盤を初めて聴いた時はその音の悪さに驚き、未だに全部通して聴くに至っていない。どうせ聴くのなら、同じ演奏のオルフェオ盤の方が遥かに音が良いので、どうしても途中で止めてしまう。部分的には聴いても、通して聴く気にはなれない。しかし、2021年にこの様な音源が発売され、話題に上るということが、フルトヴェングラーの凄さであり、また、人気がある証拠とも言える。 そんなフルトヴェングラーの人気の理由を再発見、再確認するのにはいい本であった。記事は総じて興味深いものになっているが、個人的に面白く感じたものは、片山杜秀氏のインタビュー記事と、伊東乾氏の書いた「作曲家フルトヴェングラー」と題した文章であった。
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